任天堂は2014年3月期まで3期連続の連結営業赤字に沈んだ。過去に『スーパーマリオ』など人気ソフトと独自ハードで世界のゲーム業界を席巻した勢いは今はない。総会ではスマートフォーン(スマホ)全盛の時代にどうやって業績不振から脱するのかという質問が目立った。ある株主は「子供もスマホでゲームを楽しんでいる時代。任天堂はスマホゲームをやらないのか」と質問した。“マリオの父”と呼ばれる宮本茂専務は「(そういう状況に)恐怖を感じているが、それが将来、(ゲームの)すべてになってしまうとは考えていない」と持論を述べた。また、「人と違うものを開発しながら驚きを提供するスタイルを続けていく」と、任天堂の方針であるソフトとハード一体開発を継続していく意向も明らかにした。
●強烈な成功体験が仇に
ゲーム業界は浮き沈みが激しい。次世代ゲーム機として期待された「NINTENDO64」が不発に終わり、任天堂は深刻な事態に陥った。オーナーの山内溥氏(故人)は02年、「誰よりもおもしろいソフトをつくる」岩田聡氏を社長に指名した。
岩田氏は巻き返しに出た。ハードの操作は簡単にしてゲームの楽しさに徹した。脳を鍛えるゲームがヒットした携帯用ゲーム機「ニンテンドーDS」や、体を動かして遊ぶ据え置き型ゲーム機「Wii」を世に送り出した。どちらも世界的な大ヒットとなり、07年10月には株式時価総額が10兆円を突破した。10兆円超えはトヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループに次ぐ規模だが、それも現在では5分の1以下になってしまった。
任天堂が得意とするゲームを1本6000円程度で販売するパッケージ型から、今では無料で遊んで課金する「F2P(原則無料)」が主流になり、ゲームソフトメーカーもスマホ対応やF2Pモデルに舵を切り、こうした流れに任天堂は乗ることができていない。ゲーム・ソフト一体開発の成功体験があまりに強烈だったため、変化に対応できなかった。また、「経営陣の高齢化が進み、世代交代が遅れた」(業界関係者)との指摘もある。
総会における岩田社長選任に対する賛成は80.64%と、かつてないほど低かった。オーナーの山内氏は昨年死去。遺族が相続税を支払うため株式を任天堂に売却したため、自社株の保有は発行済み株式の16.4%と異常に膨らんだ。
社長欠席の株主総会が終了直後、同社の株価は上昇した。そのため、「市場は“ポスト岩田”に期待している」との見方も広がっている。
(文=編集部)