続いて8月に入り、富士フイルムホールディングスがオリンパスと経営統合を目指していることが明らかになった。両社が統合すれば、独シーメンスなどに対抗できる世界的な医療機器メーカーに育つ可能性がある。
テルモはオリンパスに2.1%出資しており、株式評価損など計80億円の損失計上を迫られた。統合に向けた資本提携交渉と同時並行して裁判が進む形となる。
経営統合を持ちかけておきながら、同時に裁判を仕掛ける。「訴訟を取り下げるかわりに、統合案を受け入れろ」と脅しをかけたようなものだ。テーブルの上では笑顔で握手をして、テーブルの下で蹴り合うのと同じだ。これではうまくいかない。
オリンパスの再建スポンサー(資本提携先)に最初、名乗り挙げたのは富士フイルムだった。だが、オリンパスはライバルの軍門を下ることを拒否。6月6日には「パナソニックが有力」と報じられたが、6月22日に一転、「ソニーと資本提携へ」とのニュースが流れた。パナソニックとオリンパスは相思相愛の関係だったが、パナソニックの新経営陣がオリンパスとの資本提携に懐疑的な見方を示し、交渉から撤退したためソニーで決着がついたかに見えた。
しかし、ソニーとの資本提携交渉が遅々として進まない中、争奪戦の脇役に過ぎないとみられていたテルモが突然、舞台中央に躍り出てきたのだ。
同社は7月26日、オリンパスに対して共同持ち株方式による経営統合を提案。「統合に伴う相乗効果が期待できる」と主張した。オリンパスは世界のトップシェアを持つ消化器系内視鏡が主力。テルモは心臓の狭くなった血管を押し広げる治療などに使うカテーテル(医療用細管)で強みを発揮する。検査や手術時に患者の体への負担が少なくて済む低侵襲医療分野で内視鏡とカテーテルは2大アイテム。両社が手を携えるメリットは小さくないというわけだ。
テルモは併せて、オリンパスに500億円の出資を提案。実現すれば持ち株比率は2.1%から15%強にハネ上がり、一気に筆頭株主に躍り出る。オリンパスの12年3月期の売上高は8485億円。対するテルモは3866億円だから、半分以下。実現すれば小が大を呑み込む買収になるのである。