「お坊さんが儲かっていたのは1980年代後半~09年代初頭のバブルまで。今では檀家さんのお布施だけでは、お寺を維持することが厳しくなってきています」
こう語るのは、地方の小さなお寺の住職だ。息子もいるが、寺の実情を知っている息子は跡を継ぐ気もなく、独立してしまった。住職が頭を悩ませているのは、今後の寺のあり方だという。
「実は、私も兼業なのですよ。住職だけでは生活していけませんから、役所のほうでちょっとお手伝いしています。でも、ほぼ毎日役所に通っているので、どちらが本業かわからなくなってきましたけど。最近、お坊さんといっても、髪の毛を生やした人が多いでしょう? あれは、副業があるからですよ。一般的な仕事をしていると、なかなか丸刈りは厳しいですから。檀家さんも減ってきましたので、葬式といってもそんなに多くはありません。財政が逼迫して弟子を取るのも厳しいので、忙しい時は、アルバイトでお坊さんを雇ったりすることもあります」(同)
この住職は今後、自分に何かあった場合は、バイト住職に寺を任せることも考えているという。しかし、もしアルバイト住職にも跡継ぎを断られた場合はどうするのだろうか。
「その場合は2パターンあります。一つ目は、寺を放棄して自治体の所有物にしてもらう。国宝など重要文化財が保存されている場合、必要な時だけ自治体の方に立ち会っていただき、ご開帳していただく。もう一つのパターンは、M&A(合併・買収)です。大きなお寺に吸収合併されて存続の道を歩む。お寺を存続させる道は、この2パターンになります」(同)
●お寺ブーム起こすため、さまざまな企画も
現在、寺業界は二極化の時代だと住職は嘆く。全国的に有名な寺であれば、知名度もあり、それなりの数の檀家もいるので収入も見込める。一方、地方の無名な寺では、そうはいかない。檀家の数も、少子化と若者の無宗教化で、右肩下がりで減り続けている。そこに追い打ちをかけているのが、不景気だ。
「檀家さんの財布のひもが、なかなか緩まない。お布施も気持ちなので、どんな金額を出されようと何も文句は言えないのですが、先日お盆の際、伺った時に出されたお布施はちょっと驚く数字でした。一般的な相場は5ケタといわれていますが、4ケタしかなかったのです」(同)
今はなり手もおらず、寺離れが加速している寺業界。それに歯止めをかけようと現在、若手の住職たちがお寺ブームを起こそうと奮起している。
「いま、お寺専門のコンサル会社を入れて、お寺で音楽イベントやヨガ、写経教室などを開催して、人を呼び込む企画を立てております。功を奏して檀家が増えればいいですが」(同)
神聖なるお寺といっても、俗世とは切っても切れないものなのだ。
(文=編集部)