万引きは原則として損害保険の対象とならず、被害に遭った企業は、犯人を特定して損害賠償請求を行うか損失を自ら補填する以外の手だてがありません。ただし、店員が万引き犯を取り押さえようとして逃がした場合だけは、強盗や盗難として損害保険の対象となります。
今回、万引き犯の自供通り犯行時に「ショーケースが開いていた」のであれば、施錠されていれば盗難として損害保険の対象となる可能性が高かったものを、まんだらけが免責にされるような陳列をしていたことになり、同社にとっては不利な状況にあるともいえます。
また、「写真公開」については、複数の専門家が、法令に抵触する恐れがあることを指摘していますが、実名で今回の問題にコメントしている人は少ないように思われます。中には8月13日付けニュースサイト「zakzak」記事『まんだらけ万引犯顔写真公開の顛末 全面公開中止 若狭弁護士「処罰の対象にならない」』のように、法令への抵触の有無よりも、処罰の可能性についてコメントされる弁護士もいることから、今後、同様の出来事があった場合に企業が取るべき対応がどのように変化していくのかも注目すべき点です。
また、「YAHOO!ニュース」の意識調査『万引き犯に「顔公開する」と警告、どう思う?』 では、35万件超の回答が寄せられ、その90%以上が「妥当だと思う」と回答しています。テレビやインターネット上などで、多くの芸能人が「顔写真の公開」を容認する発言をしていることもあり、万引き犯に対する制裁のほうが、遵法よりも関心を呼んでいるように感じます。
●店側に多大な労力とコストが発生
万引き被害に遭った企業は、警察に被害届を出し犯人を逮捕してもらい、犯人に直接損害賠償請求を行わなければなりません。2012年度の認知件数だけで13万4876件、逮捕者が9万3079人(検挙率72.5%)という状況です。このように毎年かなりの数の万引きが発生し、小売業の悩みの種となっていますが、金品の回収が未定な状態で社員の時間と労力、多大な出費を割くことがどこまで有効なのかという問題もあります。
【万引き被害により小売店側に発生する対応】
警察への通報、被害届の提出、事情聴取、逮捕後の警察からの連絡対応、加害者への損害賠償請求、損害保険会社との交渉、犯人に支払・弁済能力がない場合の親権者又は親族との交渉、弁護士対応