『Samsung Galaxy S5 ALS Ice Bucket Challenge』
動画URL http://youtu.be/6w4Gqt-ljb4
7月からアメリカのセレブの間で広まり、いまや世界中で盛り上がりを見せている「アイスバケツチャレンジ」。指名を受けた人が氷水をかぶり、それを動画に収めて次に氷水をかぶる3名を指名する。これは、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者を支援するためのチャリティ企画だが、指名を受けた人は氷水をかぶるかALS支援団体に寄付をするかを選ばなくてはならない。
急激に盛り上がる機運に対し、否定的な意見も続出し始めている。タレントの武井壮やビートたけし、歌手の大江千里や和田アキ子も氷水をかぶることを拒否するコメントを出した。
また、歌手の鬼龍院翔(ゴールデンボンバー)は、チャリティについて一定の支持は示しつつ、流行のようになっていることに「形容しがたい違和感」があるとし、氷水ではなく墨汁をかぶり、次の人物を指名することは避けた。俳優の金城武やも水はかぶったが、「一時の流行ではないことを願う」と延べ、慈善行為の継続を訴えた。
このように、お祭り騒ぎの様相を呈して盛り上がる氷水かぶりに対し、懸念を示す意見も増えているが、一方で盛り上がりに乗じて氷水かぶりを商売に利用する企業が出始め、批判が高まっている。
フジテレビ亀山千広社長が、氷水をかぶる様子を情報番組『バイキング』で流しつつ、同番組の司会をするタレントの宮迫博之(雨上がり決死隊)を指名して生放送中に氷水をかぶるように指示し、宮迫は8月22日の同番組内で氷水をかぶった。これに対し、インターネット上では「慈善活動を商業利用していると批難が続出している。
さらに同22日、韓国サムスン電子の英国法人が無料動画共有サイト「YouTube」の公式チャンネル上で、同社製のAndroidスマートフォン「GALAXY S5」に氷水をかける動画を公開した。同端末は約91センチの水中に30分沈めておいても壊れない防水性を備えており、氷水をかけた後に防水機能のないライバル端末であるアップルの「iPhone 5s」、HTCの「HTC One 8M」、ノキアの「Lumia 930」を指名している。自社製品の長所をアピールする「比較広告」の手法を取っているわけだ。
しかしこの動画を見た人たちからは、「慈善活動を自社の宣伝に利用するのは間違っている」「企業倫理を疑う」など、チャリティ運動を利用した宣伝動画に対し否定的なコメントがネット上に次々と書き込まれ、サムスンにも苦情が殺到しているという。
サムスンはこれまでにも、意図的に他社を貶めるようなマーケティングを度々展開しており、今回も“炎上マーケティング”ではないかとの推測もある。今のところ、アップル、HTC、ノキアは静観の構えのようだ。チャリティ企画を商業利用することはリスクも多く、今後の展開次第ではかえって「GALAXY S5」の売り上げを阻害する要因にもなりかねず、動向から目が離せないところだ。
(文=西山雄基/マーケティングコンサルタント)