TPMSとは自動車のタイヤの空気圧を測定するもの。もともとはパンクによる走行の危険を防ぐために注目されたが、近年では適正な空気圧を維持することで燃費性能が向上、さらにはCO2(二酸化炭素)の排出が低減する点も評価されている。TPMSの先進国は米国で、2000年に米国で自動車の安全性に関する規制「TREAD法」が成立し、07年9月から新車にTPMSの装着が義務付けられた。12年には欧州で法制化が決まり、13年には韓国でも義務化の導入が決まっている。現在、日本や中国でも法制化に向けた検討がなされている。
TPMSは具体的には、タイヤの空気圧や温度をタイヤ内に設置されたセンサーで測定。送信機でその情報を運転席の受信機に送り、ドライバーに異常など知らせる。スピードメーターなどの計器類の一部に、「空気圧適正」のランプがつくような仕様だ。
●TPMSで高まる日本企業の存在感
日本ではバルブ大手の太平洋工業が以前から手がけている。バルブコアで培った技術で、送信機を展開している。送信機はセンサー部と電池からなり、1個の重さはわずかに35グラム。タイヤ内部に装着するため、「最も過酷な環境で使われる車載電子部品」と呼ばれているという。同社では電子部品の実装から検査までを一貫して手がけている。日米に製造拠点を有しているが、採用国・地域の拡大などを背景に、先ごろ中国にも拠点を建設した模様。国内でも設備増強が進むとの観測もあるようだ。15年3月期は売上高930億円(前期比1%増)、営業利益65億円(同18%増)、1株利益93.5円を計画するなど、業績は順調に推移している。
また、送信機からドライバーが見るインパネまでは、電波で送信する。発信機は送信機同様に過酷な使用環境に置かれる。水晶デバイス専業で世界大手の日本電波工業は、車載向けの水晶振動子「NX5032D」を開発している。タイヤの遠心力は2000Gに達するが、それでも安定した周波数特性を有するという。
日立マクセルはTPMS用の電池を手がけている。耐熱性に優れた素材と同社独自の技術により、電池が動く温度の範囲を向上させることに成功。零下40度の極寒から摂氏125度という高温下に長時間さらされても、電気特性を維持する。タイヤはさまざまな環境で使われるが、これに耐えうる製品だ。
TPMSの普及とともに、日本企業の存在感が高まりそうだ。
(文=和島英樹/日経ラジオ記者)