ある大手メーカーのニューヨーク支社でのことだ。この企業では、出張時の食事代は、支払った分のレシートを提出することで、払い戻しを受けられる取り決めになっていた。
駐在員・A氏がヨーロッパ出張から帰り、出張精算をクーリエで送ってきた。出張で使用するホテルは、アメリカでいうならヒルトン、シェラトンクラスで、ランクが落ちることはなかった。ヨーロッパのこれらのホテルは、アメリカとは違い朝食込みである。
しかし、A氏は「出張中の朝食のレシートを、すべて紛失しました」とウソの報告をし、 朝食代数日分をかすめ取っていたのだ。本来、「レシート紛失の場合は、支給されない」というルールになっていたが、駐在員である経理部の責任者は「仕方ないなぁ……」とこれを認めて、請求額全額をレシートなしで支給していた。
【その2:出張先宿泊ホテルに家族と泊まろうとするケース】
日本からニューヨークに派遣される場合、その当事者の子供が高校生や大学生の場合、単身赴任になるケースが多い。夏休みのような長い休みには家族を日本から呼び寄せることも多い。そしてアメリカ国内への出張の際、家族を同伴し、同じホテルに泊まり、家族の宿泊代も出張費用として処理し、出張先での仕事が終わると、そのまま 有休を取る者もいた。
家族同伴で出張に行く駐在員の公私混同ぶりを、本社へ告げ口する者などはいない。
【その3 接待費は他企業へでなく、日本からの出張者に流れる】
接待費は取引企業をもてなす際に必要経費として請求できるが、本社からニューヨーク支社へ出張する社員をもてなす際にも、請求しているケースは多かった。
その際によく利用されるのが、ピアノバーと呼ばれる日本女性がホステスとして働くバーで、特にメーカーの社員たちが好んで使っていた。料金は4ツ星レストラン以上の高額になるのだが、領収書を切る際に、店名を「〇△レストラン」と変えさせ、本社への月次経理報告書に紛れ込ませて送付するのである。
【その4 エコノミー料金の日本への出張航空運賃を、ビジネスクラスで請求する】
出張でビジネスクラスを利用できるランクの駐在員は、会社からクレジットカードを支給されているため、それで精算できる。しかし、カードを使わず一旦自腹で立て替え、エコノミークラスに乗り、懇意にしている旅行代理店にビジネスクラスの金額で請求書を切らせようとするケースもあった 。
さすがにこの悪事は会社にバレたが、当人は誰からも咎められることはなく、やがて何事もなかったかのように帰国した。
【その5 接待費で日々の食事を賄う】
取引企業の接待でなく、本社からの出張者を接待する費用は、当然接待費としては計上されない。
しかし、単身赴任のニューヨーク支社幹部の中には、接待費もかなり融通が利くことを利用して、夕食を1人でとるのも淋しいのか、誰かしらと予定を組み、「接待」として称して自分の懐から夕食代を出したがらない者もいた。
(文=青空ココロ)