特に商社では、ニューヨーク支社のトップを務めた者が帰任し、本社の社長に就任するケースが多い。また、領事館や行政機関の事務所も複数点在し、ニューヨーク事務所のトップが帰国し、県知事に転身したりするケースもある。
つまり、ここで実績を挙げられるかどうかで、その後の身の振り方も大きく違ってくる。その鼻息の荒いエリートたちは、本社から離れているため自由に振る舞う人たちも多く、場合によっては好待遇にあぐらをかき、勘違いしてしまう人たちも意外に多いのである。
現地採用社員として私は、数多くの日本企業に勤めてきた。ニューヨーク支社で働く同じ日本人でありながらも、日本からやってくる駐在員の立場と現地採用社員の待遇には雲泥の差があり、現地採用社員は駐在員からすると“下請け”のような扱いを受けることも少なくはなかった。
今回は、一部の駐在員が本社には知られないまま、エリート駐在員らしからぬ卑劣な行為をしていたことを目の当たりにした当事者として、その実態を紹介する。
日本では役職がなかった者も、ニューヨーク支社に着任すれば立派な肩書がつき、支社長で迎えられると秘書もつく。摩天楼を背景にした一等地の社長室には革張りの大きな背もたれ椅子と大きな机、そして社長室内に応接セットが置かれている。
特別な来客はさらに高価な調度品のある応接室に通されるが、ほとんどの来客は社長室内の応接スペースに通される。来客の際、秘書は日本の本社役員秘書と同じように、ニューヨークでありながら緑茶を運んだりする。
居丈高な駐在員が多いのは商社、証券会社
物腰柔らかく謙虚で礼儀正しい駐在員も数多くいたが、比率的には居丈高な人のほうが多かった。特に、こうした態度の幹部、駐在員は商社、証券会社に多く、同じく金融でも銀行は物腰の柔らかな丁寧な人が多かった。また、駐在員の態度がよく、働きやすい職場は重工業の企業だ。
ニューヨーク支社に転勤になると現地法人に所属するのだが、常に日本の本社の動向ばかり気にし、ニューヨーク現地法人の現地スタッフを見下すような人たちも多かった。これらの駐在員は、現地に溶け込む努力もせず、本社が望むグローバル化とはまったく異なる姿勢の人もいた。本社は海外駐在員の動向を細かく把握できず、本社の手の届かない海外支社で自由気ままに好きなようにやっていても、それを本社に通告する人などはいないのである。
中には、派手に接待費を使い、しまいには会社の金に手をつけてしまう駐在員がいたのも事実である。
実例の一部を取り上げてみよう。
【その1:出張時の食事代を水増しするケース】