鈴木氏はドミナント(高密度多店舗出店)戦略をとっており、儲かるところにのみ店舗展開してきた。鈴木会長はかねがね「セブン-イレブンの競争力は突き詰めるとドミナント戦略に行き着く」と語っていた。一定エリア内に高密度で出店すれば物流、広告、店舗の指導など、あらゆる分野で効率化できるからだ。
だから儲かりそうもない地域には出店しなかった。その典型が四国だ。同地区にはローソンが432店、ファミリーマートが262店を数えるが、セブン-イレブンの看板は1枚もない。ところが見向きもしなかった四国に進出するというのだ。
ドミナント戦略はセブン-イレブンの経営の根幹をなす。その持論を引っ込めてまでして儲かりそうもない地域への出店。なぜか?
鈴木敏文氏の闘争心に火をつけたの、はam/pmの争奪戦である。ローソンとファミリーマートによる激烈な戦いを経て09年11月、同社をファミマが買収した。他社の地域本部の乗っ取りはコンビニ業界のタブーだったが、新しい店を出すための適当な立地がなくなってきたこともあって、M&A(合併・買収)に活路を見出すことになったわけだ。
コンビニ業界は、仁義なき戦いに突入したのである。
まず標的になったのが、サークルKサンクスのうちのサンクスの地域運営会社。サンクスは旧長崎屋の傘下だったが01年、ユニーの子会社、サークルKと経営統合し、その後、合併した。しかし、いまだにサークルKとサンクスは別々に運営している。
長崎屋はエリア(地域)フランチャイズ方式でサンクスの店舗を増やしてきた。エリアフランチャイズとは、一定のエリアの地域本部の権利を地場企業に譲渡してビジネスを展開する手法だ。
だがその後、セブン-イレブン、ローソン、ファミマの上位3社と、それ以下との優勝劣敗がはっきりしてきた。ブランド力が弱いサンクスの地域本部となった地場企業にとって、これは死活問題だ。当然、サンクスから離脱する動きが強まった。
北海道キヨスクは10年11月、これまでサンクスで展開していた5店舗を含む6店舗をセブン-イレブンに転換した。