なぜ日本人は“異常に”お金を使わない?ひたすら貯蓄するワケ データと感情面より考察
イオンなどの大手スーパーに行くと、プライベートブランドが大盛況です。本当に安くて素晴らしいと思いますが、きちんとした身なりの主婦が130円と100円を迷って100円を選ぶ姿を見ると少し寂しい気もします。複雑な要因が重なり、イオングループの14年度第1四半期の業績において中核子会社イオンリテールの業績は20億円の営業赤字に沈みましたが、消費者の財布の紐は固いです。30円を気軽に使う気になれないという現象が、景気回復感が湧いていない象徴です。
景気回復の定義は、一義的には「お金の流通量が増えて循環すること」だといわれていますが、少なくとも内需が盛り上がらなければ、人々は景気回復を実感できません。
では、なぜお金の流通量が増えないのでしょうか? マクロ経済の観点からさまざまな解説がなされていますが、今回はさまざまなデータを基に、人間の感情の視点から見てみたいと思います。
●他の世代の4倍の貯蓄を持つ高齢者世代
経営コンサルタントの大前研一氏は、お金の流通量が増えない理由について、12年に「週刊ポスト」(小学館)誌上で「日本のシニアたちが、いま持っているお金を使いたがらないことである。戦後の貧しい時代に育っているため、お金を手元に置いておかないと気が済まないのだ。その結果、彼らは平均3000万円以上のお金を残して死んでいく」という趣旨のことを述べていました。高齢者が自分でお金を使わずに貯蓄することは、相続を通じて子孫に資産を残してあげるという優しさの表れであるのと同時に、少しでも不安を抱く時間を過ごしたり、惨めな思いをするのを何よりも避ける傾向があることを端的に示しています。
「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/13年7月13日号)によれば、60歳以上世帯の平均貯蓄は2000万円超であり、個人金融資産1500兆円の6割、つまり900兆円を60歳以上世帯が占めています。13年時点で60歳以上の人口は全人口の32%なので、単純計算すれば他の世代の4倍程度の貯蓄を持っていることになります。
相続税や贈与税の特例措置などで若い世代への資産移転を図ることは、何もしないよりは効果を生み出すでしょうが、資産を持たざる者は使えもしないので、消費性向(収入のうちどれだけ消費に回すかを示す指標)の実績値からは、世代間移転の効果について検証できません。ただ、高齢者が貯蓄を直接的あるいは間接的にでも消費活動に回してくれれば、経済が活性化するのは明白です。しかし現在のところ、貯蓄に意識が向いているようです。高齢者が貯蓄を継続させる理由としては、人間は年をとればとるほど保守的になり、他の世代から見たら羨ましいような貯蓄があったとしても、まだ不安を感じるためだと筆者は考えます。