上場直前には「公開価格+α」の初値が形成されれば御の字といわれており、その通りになった。しかし、上場直後から「売り出し価格こそ上回ったものの、上昇気流には乗れない」との悲観的な見方が多くなっていた。
確かに、上場後の株価については強気派と弱気派に分かれていた。これはいつものことである。強気派は「売り出しの配分は国内7、海外3だったが、海外からの引き合いが強く、海外の機関投資家の買いが株価を下支えする」(証券アナリスト)と見ていた。上場前に香港グレーマーケットでつけた4024円が当面の上値の目安になるとの見解だった。実際に海外に割り当てたのは25%だった。
●結局、JALはフェイスブックの二の舞になるのか?
株価が1株当たりの利益の何倍に当たるかを示すPER(株価収益率)は現在、約5倍。ANAの15倍に比べて割安だと指摘する声もある。
一方、「JAL、『フェイスブック化』の懸念」(『日経ビジネス』2012年9月17日号)に代表される弱気派は<「フェイスブックのようにならなければいいんだが……」。JAL幹部は、不安げな表情でつぶやく>と書かれている。
インターネット交流サイト(SNS)最大手、フェイスブックは5月18日、米ナスダック市場に上場した。2012年最大の新規株式公開(IPO)案件である。公開価格は38ドル。上場前は、「市場活性化の起爆剤」になるとお祭り騒ぎだったが、初日に期待された価格高騰もなく38.23ドルで取引を終えた。5月末には株価は30ドルを下回り、9月には17.72ドルとなり、売り出し価格の半値以下に崩落した。
では、JALは、フェイスブックの二の舞になるのだろうか? 市場の見方はノーであり、イエスである。
ノーの理由は「フェイスブックの株価が暴落したのは、SNSバブルがはじけたから。日本でも2000年にインターネットバブルの崩壊で、ソフトバンク、光通信に代表されるネット関連銘柄が大暴落した。SNSバブルの崩壊で、まったく同じ現象が起きただけ。その意味では、JALはフェイスブックの二の舞にならない」。
一方、イエスの理由は「収益への懸念」だ。フェイスブックは上場後初となる2012年4~6月期決算の最終損益の段階で1億5700万ドル(約123億円)の赤字となった。同社は収入の約85%をサイトに表示する広告事業に頼っている。ネット広告市場で期待される成長分野は携帯電話(スマートフォン)だが、フェイスブックが明確な携帯電話戦略を打ち出せなかったことから投資家の失望売りを招いた。