すると、思いがけない反響があった。大手スポーツジム関係者が「アスリートは疲労がたまり、体はボロボロ。ジムの売店で販売したい」と申し出たのである。「休養」に焦点を当てた商品にニーズがあることに、中村氏が初めて気付いた瞬間だった。
翌08年1月、スポーツジムの原宿店、表参道店でTシャツのテスト販売を始めたところ、ジムのトレーナーが大絶賛。会員へも口コミで広がり、系列店など約40店舗に販路は拡大。1カ月で数百万円の売り上げを記録した。このヒットで確かな手ごたえを感じた中村氏は、東海大学との産学連携事業としてウェアを開発。“攻めの休養”を提案する休養時専用ウェア「リカバリーウェア」として10年2月から本格販売を開始。伊勢丹新宿店(東京)で11年度のスポーツウェア部門の売り上げナンバー1を記録するほどの大ヒット商品に成長したのである。
●海外市場へも進出
こここへきてアスリートに加え、慢性疲労のビジネスパーソンや主婦、高齢者など疲労回復ウェア愛用者のすそ野は確実に広がってきている。しかし、安閑とはしていられない。大手が次々と参入し、競争が激化しているからだ。ベネクスは先行企業として、ライバル各社の追随を許さない戦略をどのように描いているのか。
「商品は米大リーガーも愛用するなど、疲労回復分野は日本だけでなく世界にも需要があると確信しています。そのため国内の販売強化はもとより、海外進出も目指しています。幸いにも、ドイツで行われる世界最大のスポーツ用品の展示会「ISPO」で最高賞(アジアプロダクツ部門)を獲得しました。欧州のバイヤーらに対して、商品をアピールするきっかけともなりました。今後、海外販売に向けて、動きだそうとしているところです」(中村氏)
疲労回復は世界中の人々のテーマであるため、海外市場も有望。34歳青年社長の夢は膨らむ一方だ。
(文=編集部)