リクルートにAIRDO…社名変更する企業が続出の背景とは?
東京証券取引所のまとめによると、05年1月から12年7月1日までの間に、社名変更した東証1部、2部、マザーズ上場の会社は、実に、277社にのぼる。12年6月15日時点での東証の上場会社は2287社。ざっと8社に1社が社名を変更した計算だ。それだけ、企業を取り巻く環境が激変したということだろう。
圧倒的に多いのが、持ち株会社への移行に伴う社名変更。持ち株会社を意味するホールディングスに社名を変更した会社は107社。社名変更会社の4社弱を占める。麒麟麦酒→キリンホールディングス、富士写真フイルム→富士フイルムホールディングス、ニトリ→ニトリホールディングスなどだ。持ち株会社の下に多角化した事業会社がぶら下げる。
M&A(合併・買収)は時代の流れだ。マルハグループ本社(存続会社)→マルハニチロホールディングス、北越製紙(同)→北越紀州製紙、山之内製薬(同)→アステラス製薬、田辺製薬(同)→田辺三菱製薬などはM&A型の社名変更だ。
ブランド名を社名とする会社も珍しくなくなった。松下電器産業はパナソニックに変身した。日本を代表する企業が創業者の名前を外した最大の理由は「グローバルエクセレントカンパニーへの挑戦」(大坪文雄社長=当時)だった。国内はナショナルブランドでお馴染みだったが、海外では違った。MEI(Matsushita Electric Industrial)と略され、製品ブランドの“Panasonic”と一致しなかった。MEIと表示されているためパナソニックに結びつかず、同社の知名度は、どうしても低かった。パナソニックは企業名とブランド名を一致させることによって、海外での売り上げの拡大を図ろうとした。
ブランドを社名にした元祖はソニーである。58年の元日、東京通信工業は社名をソニーに変えた。“SONY”というブランドを使い始めてから3年後のことだ。
この時、「創業以来10年間かけて、業界に知られるようになった東京通信工業という社名を、今さら、わけがわからない名前に変えるとは何事だ」と、メインバンク、取引先、社内から、一斉に反対の声が挙がった。社名とブランド名を一致させることは、当時は暴挙としか映らなかったのだ。社内外から社名変更の狙いを聞かれた、創業者の一人で、ソニーブランドの生みの親である盛田昭夫氏は、こう答えた。
「我々が世界に伸びるためだ。そのために、わざわざソニー株式会社にしたのだ」
ソニーが世界を席巻していくのは、それからだ。今ではその輝きを失ってしまっているけれど、ソニーは社名変更が最も成功した会社だった。