山口FGが香川県トップの百十四銀行(高松市)と手を組むとの観測もある。百十四銀行は香川県を地盤に岡山県や大阪府など瀬戸内地域で支店を展開しており、山口FGが百十四銀行と組むメリットは大きい。
●金融再編を呼び込んだ頭取解任劇
かつて中国・四国地方の地銀の盟主は広島銀行だったが、現在では山口FGに首位の座を奪われた。山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行を傘下に持つ山口FGの昨年9月末の預金残高は8兆8387億円。これに対して広島銀のそれは6兆2369億円と大差がついた。もみじ銀行を買収したことが逆転の契機になった。
その買収のいきさつを描いた小説『実録 頭取交替』(講談社)が今、山口県の書店でベストセラーになっているという。昨年10月に出版され、著者は山口銀行の取締役を務めた浜崎裕治氏。
04年5月21日、山口銀行の臨時決算取締役会を舞台にした頭取解任のクーデターを描いている。当時、銀行界を騒然とさせた事件だ。「山口銀行のドン」といわれた田中耕三相談役(小説では甲羅万蔵)の指示で、田原鐵之助頭取(同・谷野銀次郎)の解任動機が提出された。動議は賛成8、反対6、棄権1によって可決され、田原頭取の罷免が決まった。田中相談役は労務管理の責任者として招かれ、労務畑一筋で頭取にまで上り詰めた異色の経歴の持ち主。労働組合出身者を取締役に引き立て、一大勢力を築いた。
頭取解任のクーデターには、すでに相談役に退き取締役でもない田中氏が関与していたことから、金融機関を監督する財務省中国財務局長が「ガバナンス上、問題がある」と問題視したと伝えられている。山口銀行は、頭取交代劇の怒りを金融当局に鎮めてもらうために、破綻寸前のもみじHD傘下のもみじ銀行を引き受けることになったというのだ。中国財務局に恩を売ったのだ。
地銀再編の舞台裏には、こうした泥臭い出来事が多い。田中相談役は御年88歳。今でも銀行からお迎えに上がる相談役専用の車に乗り込み、毎日出勤しているという。
(文=編集部)