出資先は香港証券取引所に上場している中国中信集団傘下の持ち株会社、中国中信(CITICリミテッド)。伊藤忠とCPグループが折半出資する共同出資会社を通じて、4月に普通株式の約10%(約5150億円)を取得する。その後、10月に普通株式に転換可能な優先株(約6890億円)を引き受ける。普通株に転換後の出資比率は約20%(約58億1800万株)となり、共同出資会社の持ち分法適用会社となる。伊藤忠などが出資後、中国中信集団の中国中信への出資比率は80%から60%に下がる。出資総額は1兆2040億円で、伊藤忠は6020億円を出資する。伊藤忠は全額、金融機関からの借り入れで賄うとしている。伊藤忠の持分法適用会社となることで、年間700億円程度の利益の押し上げがあると説明している。
20日、都内で記者会見した岡藤正広社長は、「(提携により)2015年度から始まる次期3カ年中期経営計画の最終年度に当たる17年度には非資源商社No.1の地位は確固たるものになり、業界トップの座も視野に入っている」と述べた。
中国中信集団は中国最大の実力者、トウ【編註:正式名は漢字】小平氏の開放・改革政策の下、1979年に設立された国有企業。創設者の栄毅仁氏は「紅い資本家」と呼ばれ、後に国家副主席を務めた。中国政府の国務院(内閣に相当)が管轄する中国最大の複合企業集団で、グループの事業分野は石油化学、金属、重工業、自動車、銀行・証券、不動産、小売り、出版などに及んでいる。
伊藤忠が出資する中国中信はCITICグループの金融分野の一翼を担う。中信銀行、中信証券など金融サービスを中心に、傘下に中信資源、中信建設など20社を持つ。有価証券報告書によると、13年12月期の売上高に当たる営業収益は日本円換算で6兆1587億円、1699億円の営業利益を上げている。
●CPグループの存在
今回の投資スキームを伊藤忠に提案したのは、CPグループのタニン・チャラワノン会長だ。CPグループは中国出身のチャラワノン一族が1921年にバンコクで種苗販売店を開いたのが発祥。タニン会長は創業者の4男。香港の商業専門学校を卒業し、CPグループに入社。69年に社長へ就任、89年から会長兼CEOを務める。現在の中核事業は食料、食品、小売りと通信。グループ全体の従業員は30万人を超え、年間売上高は4兆4000億円に上る。