ホンダの同期売上高は9兆2930億円と前年同期に比べて6.3%増加したが、本業のもうけを示す営業利益は5397億円と同7.7%の減少となった。しかも、通期業績見通しについては、売上高は前期比8.9%増の12兆9000億円を見込むものの、営業利益は同4.0%減の7200億円、純利益も同5.1%減の5450億円と減益となる。これまでの予想より営業利益で500億円、純利益では200億円それぞれ下方修正した。
昨年10月の段階での増益予想から一転してホンダが減益となるのは、東日本大震災やタイで発生した洪水による生産拠点の一時的な操業休止などのアクシデントが重なった12年3月期以来3年ぶりだ。岩村哲夫副社長は減益の理由について「主に日本、中国における厳しい市場環境による販売台数の減少や、北米を中心とした品質関連費用が増加しているため」と説明した。
中国では反日感情から相変わらず日本車に対する買い控えが影響しているとみられるが、これはホンダに限ったことではなく、トヨタ自動車や日産自動車などの日本勢も苦戦している。一方、国内市場は消費増税後の反動減から新車販売は伸び悩んではいるが、それでも14年の総台数は軽自動車が好調で、前年比3.5%増の556万2887台と3年連続で500万台を突破した。だが、ホンダの国内四輪事業は、売れ筋の軽自動車の割合が5割以上も占めているにもかかわらず、販売の不振が際立つ。
●販売計画目標、達成困難な情勢に
14年度期首に岩村副社長は「今期は国内販売2割増の103万台という数字にチャレンジしたい」と強気の計画を示し、「6車種のニューモデルを一気に投入する」とも宣言していた。さらに消費増税前の駆け込み特需に伴う反動減が気掛かりな昨年4月以降も、「消費増税の影響は軽微」などと息巻いていた。
しかし、主力車種である新型「フィット ハイブリッド」などの度重なるリコール(回収・無償修理)に加えて、米国で火の手が上がり国内にも飛び火したタカタ製欠陥エアバッグの品質問題も追い打ちをかけた。そのあおりを受けて、予定していた新型車の投入時期が大幅に遅れている上、既存車種の販売にも急ブレーキがかかる。ユーザーの購入が決まらないのに販売店が独自にナンバーの登録だけを陸運局に提出して手続きを済ませる、いわゆる「未使用車」で水増しする応急的な措置を講じても、当初の計画目標の達成が極めて難しい情勢となった。
このため、昨年10月末には目標を10万台下げて93万台に修正。さらに、3カ月後の今回の決算説明会でも約10万台少ない82万5000台に引き下げた。同じ車種が発売後わずか1年足らずの間に5回もリコールを届け出たことも前代未聞だが、年首の販売計画を年度の後半に2度も見直すというのも異例である。国内の大手自動車メーカーはトヨタをはじめ、マツダや富士重工業なども円安の追い風を受けて最高益を見込んでいるほか、利幅の少ない軽自動車が主力のダイハツ工業でも減益予想はしているものの、通期の販売台数や業績見通しは変更していない。