場内には、おいしそうな匂いが漂った。試食した人々の反応はどうか。
「軽量で調理も簡単だから、山歩きや釣りなどのアウトドア用にピッタリ」
「フリーズドライとは思えない」
「防災用の保存食としても活用できそう」
その手軽さと確かな味わいに参加者は驚き、また感心するなど、なかなか好評だった。
天野実業のフリーズドライの歴史は意外と古い。1968年にフリーズドライ食品の有効性に着目し、本社工場に真空凍結乾燥機を設置した。その後、2代目社長の天野肇氏がイカやエビ、焼き豚などをカップラーメンの具材として開発。これが大手食品会社に採用され、具材開発の委託を受けるかたちで商品化に成功した。
一般消費者向け商品が登場したのは82年。高級即席みそ汁の商品化にこぎつけ、翌83年に4種類のみそ汁を発売した。それから30年あまりたつ。数年前に大手コンビニエンスストアチェーンが他社のフリーズドライ商品をプライベートブランド(PB)商品として採用したことから、この2~3年で消費者の認知度が急速に高まりつつある。現在では永谷園やマルコメなど数多くのメーカーが参入し、商品が大手スーパーやコンビニにも置かれている。
天野実業は幅広い製品を製造しているが、みそ汁を型枠に入れてフリーズドライにしたブロックタイプのみそ汁では、60%のシェアを誇る断トツのメーカーだ。年間の製造数量は、主力のみそ汁換算で約1億7000万食(2014年=前年比14%増)。即席みそ汁市場におけるフリーズドライみそ汁の伸びがすごい。08年を100とした場合、即席みそ汁市場全体は150で推移しているが、フリーズドライみそ汁は500と、大きく伸長している(出典:食品データ会社KSP-SP)。
200種類を超す幅広い商品群
天野実業の商品は、みそ汁を筆頭に、カレーやシチュー、にゅうめん、雑炊、だし、丼の素、パスタソース、トムヤムクン、参鶏湯など和風、洋風、エスニックまで200種類以上のメニューがある。忙しい主婦や単身赴任のビジネスパーソンにとっては、重宝な存在となっている。