武田の15年3月期連結純利益(国際会計基準)は、前期比39%減の650億円になる見通し。従来予想を200億円下方修正した。海外で血液がん治療薬「ベルケイド」などが伸びるが、研究開発費の税務上の処理方法を見直したため、税負担が増す。武田の売上収益(売上高に相当)は2%増の1兆7250億円を据え置いた。米国で昨年発売した潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」などの新薬が好調で、主力薬の特許切れで不振の国内を海外が補う。
対するアステラス製薬は4月24日、15年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前の期比49%増の1358億円だったと発表した。売上高は9%増の1兆2472億円だった。欧米で前立腺がん治療薬「イクスタンジ」や過活動ぼうこう治療薬「ベタニス」などの販売が伸び、後発薬の普及や薬価改定で減収となった国内を補った。5月11日に15年3月期決算の正式発表を予定している。連結純利益でアステラスが武田の2倍になった。13年3月期には5752億円、14年同期には5817億円の差があった売上高でも4778億円の差にまで縮小した。2年間で、およそ1000億円追いついたことになる。
15年3月期の業績は武田が下方修正したのに対して、アステラスが上振れし、アステラスが武田薬品を突き放した。
昨年10月、アステラスの時価総額が武田を逆転したと話題になった。その後、武田が再逆転したが、15年3月期の純利益でアステラスが武田に大差をつければ、再々逆転があるかもしれない。
●明暗を分けた海外M&A
リーマンショック直前の08年3月期連結純利益(当時は日本基準)は、武田が3554億円、アステラスは1774億円と2倍の差があった。15年3月期の純利益はアステラスが08年3月期の過去最高益に迫る勢いなのに対して、武田のそれは08年3月期実績の2割弱にとどまる見通しだ。8割目減りしたことになる。
両社の明暗を分けたのは海外M&Aだ。武田は08年に米ミレニアム・ファーマシューティカルズを約9000億円で買収。ミレニアムが生み出す薬をがん領域の中核と位置付け、がん領域で世界トップスリーを目指すとした。武田は11年にもスイスの製薬会社ナイコメッドを約1兆1000億円で買収した。
大型買収が相次いだのは、糖尿病治療薬「アクトス」や高血圧治療薬「ブロプレス」などの大型薬が11年以降、特許切れを迎えるためだった。だが、期待した大型新薬はこれまでのところ出ていない。