レスポワール投資事業有限責任組合からKABホールディングス合同会社(加畑雅之代表社員)に株式が譲渡され、親会社が異動したためだ。KABは24.05%を保有(議決権ベース)する筆頭株主になった。レスポワール側の取締役が退任し、KAB側が新たに取締役を送り込む。その6人は下記だ。
【取締役候補者】
取締役:加畑雅之(KABホールディングス合同会社 代表社員)
同 :西牟田泰央(株式会社創広 取締役社長)
社外取締役:浜田卓二郎(弁護士法人浜田卓二郎事務所 代表社員)
同 :内田輝紀(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 弁護士)
同 :千葉昭雄(曙綜合法律事務所 代表弁護士)
同 :生駒雅(有限会社エス・ピー・シー・コンサルティング 取締役)
カーチスHDを買収したKABの加畑雅之氏とは誰? と、首をひねる向きがほとんどだろう。研ナオコさんや志村けんさんを起用したテレビCM『母さんお肩がこってるの♪♪ プチ、プチ シルマ、プチシルマ~父さんお首が回らない♪♪ ~プチ、プチ シルマ、プチシルマ~』で大ブレークしたゲルマニウム健康器具・プチシルマを発売しているレダ(東京・千代田区紀尾井町、非上場)のオーナー社長が、加畑雅之氏なのである。
レダの常務だった西牟田泰央氏が社長を務める創広(東京・中央区銀座、非上場)は、雑誌専門の広告会社。09年9月にレダが買収して関連会社に組み入れた。創広の顧問が浜田卓二郎弁護士である。
浜田氏は大蔵省(現・財務省)出身で、埼玉県を地盤に政界に進出。自民党、新生党、新進党、改革クラブと転々。自民党に復党して、04年の参議院選に比例区から出馬したが落選。政治家を引退して弁護士に転じた。妻の浜田マキ子さんは91年の東京都知事選挙に立候補(落選)したことで知られる。
「政界や経済界だけでなく、芸能界やスポーツ界に心酔者が多い経営コンサルタントの慧光(えこう)塾と加畑氏の関係は有名。慧光塾の光永仁義社長(故人)の長男の結婚披露宴に、加畑氏や浜田元代議士夫妻も出ていました」(事情通)
プチシルマと中古自動車の取り合わせは、どう考えても妙。「カーチスの歴代のオーナーがそうであったように、投資目的でしょう」(証券関係者)
カーチスは87年12月の設立。全国展開の中古車買い取り大手で、13年3月期の売り上げは367億円、当期純利益は7億7000万円を見込んでいる。同社は社名を頻繁に変更する会社として有名だ。エイジーエイ→オートガーデンアソシエーション→ジャック→ジャック・ホールディングス→ライブドアオート→カーチス→ソリッドグループホールディングス→カーチス→カーチスホールディングスと7回も社名を変更をしてきた。上場企業のなかでも社名変更の回数はダントツの1位である。
しかも、この会社の親会社や経営者になると、必ずと言っていいほどトラブルに巻き込まれるため、投資家の間では「ジャックの呪い」と呼ばれている。
カーチス創業者の渡邉登氏は名うての相場師だったが、ネットバブル崩壊で持ち株が暴落、会社のカネを流用していたため業務上横領容疑で逮捕され、あの、ライブドアが買収した。
「かいてん、カイテン、開店……。1月1日。ホリエモンの車、1円オークション、やります」
06年元旦、赤いユニフォームを着た堀江貴文氏が出演するテレビCMの放送開始とともに、ジャック・ホールディングスの社名はライブドアオートに変わった。その直後に、ライブドアに東京地検特捜部の強制捜査が入り、ライブドア社長のホリエモンこと堀江貴文氏は塀の内側に落ちた。
その後、ヤマハで社長を務めていた川上浩一族の投資会社、ソリッドアコーステックス(SA)の傘下に入ったが、SAが、またまた投資に失敗して破産。株式は大島健伸氏が率いる商工ローン大手、SFCGに渡ったが、その後これまた破産した。
SFCGから債権を買い取った日本振興銀行が担保権を行使して名義を変更。今度は木村剛氏の日本振興銀行が親会社になった。銀行法で銀行は事業会社の5%以上の株式を保有することを禁じられているため、受け皿として合同会社レスポワールを設立。レスポワール投資事業有限責任組合の名義で株式を保有してきた。ところが10年9月10日午後に日本振興銀行は民事再生法の適用を申請した。金融庁はそれに先立ち、同日朝、預金1000万円までの元本と利息を保護するペイオフを発動した。ペイオフの発動は、わが国の金融市場初めてのことだった。
日本振興銀行の関連グループの整理が進められ、その一環としてレスポワール投資事業有限責任組合は、保有しているカーチスHDの株式も売却された。
KABがレスポワールから取得した株式の価格は、1株30円程度とみられている。5674万9700株を買い取ったので、投下した資金はざっと計算して17億円だ。「株価を40〜50円に引き上げて、高値での売り抜けを狙っている」(証券関係者)と市場(マーケット)では取り沙汰されている。果たしてどうなるのか。
親会社や経営者が死屍累々を重ねてきた「ジャックの呪い」をものともせず、買収した加畑氏は凄いという驚嘆の声が投資家からあがる。彼らが常に縁起をかつぐ人種だからだが、本当に呪いは解けたのだろうか。
(文=編集部)