「『あの商品は面白い』とバイヤー同士の口コミで広がり、弊社のブースに人が集まりました。スポーツウェアの目覚ましい進化で、どのメーカーも差別化に腐心している中、今までにない圧倒的な個性が受けたのだと思います。最初は訝しがる人もいましたが、現場で理論を説明し、着用前後の血流の変化を試してもらうと『これはすごい』という反応に変わりました。日本より販売価格は高いですが、ヨーロッパでは『いいものは高くても売れる』という意識があるようなので、障壁にはならないと見ています」(中村社長)
ヨーロッパでは、5月の店頭販売開始と同時に、インターネット上でも販売を開始する。ドイツ語と英語のサイトを皮切りに、フランス語、イタリア語、スペイン語にも対応を進め、ネット上ではEUを商圏として先行させていく方針だ。当面の市場はヨーロッパだが、北米を次のターゲットに見据えており、まさに世界への挑戦が始まろうとしている。
国内外15大学で効果効能の科学的検証を実施中
中村社長は、ヨーロッパでの展開について、さらにこう語る。
「リカバリーウェアは、日本ではトップアスリートの口コミで大ヒット商品となりましたが、ドイツをはじめとするヨーロッパでは『REGENERATION』という言葉で伝えています。リカバリーが『病気からの回復』というイメージなのに対して、『REGENERATION』は大自然の中で疲れた体を充電するといった前向きのイメージです。休養に対する理解や意識が非常に高い『休養先進国』のヨーロッパ市場のニーズは、日本より高いと感じています。そのヨーロッパで、REGENERATION市場の開拓者でありたいと考えています」
ベネクスの進出が刺激となり、今後は世界的メーカーとの激しい競争も展開されることになりそうだ。その争いを制するためには、なんといってもブランドの信頼性が重要になる。今、ベネクスは国内外15大学と共同で、効能効果の新たな科学的検証を行っている。
「東海大学、埼玉大学、新潟大学、横浜国立大学、順天堂大学、神奈川県立保健福祉大学、東京医療保健大学など国内の10大学と、UCLA(米カリフォルニア大学ロサンゼルス校)、独ボーフム大学など海外5大学と共同研究を行っています。疲労回復はスポーツ医学などの分野で注目を集めており、アスリートらの推薦に加え、実際の研究成果が国際的な学会で発表されるようになれば、ブランド力は一気にアップするでしょう」(経済ジャーナリスト)
厚木のベンチャー企業は、カジュアルウェアでグローバル展開を果たしたユニクロに続くことができるのだろうか。
(文=編集部)