ファストリは、今回の人事制度の変更で国内志向の人材(スタッフ)を積極的に評価する方針に大転換した。「土日に休むといった柔軟な働き方も認める」と柳井正会長兼社長は人事政策の変更を説明した。
地域正社員への転換で人件費は増える。14年8月期の国内ユニクロ事業の人件費は742億円であり、13年8月期の647億円から95億円増えたが、これはパートとアルバイトの時間給を増やした結果だ。今後、正社員への転換に伴い、人件費は少なくとも2割超増える見通しだ。
人件費の重荷を背負ってでも、国内の事業のテコ入れを図るのはなぜか。裁判で「ブラック企業」体質を持つと烙印を押されたことと無関係ではない。
●月300時間超の労働に「真実相当性」
ファストリは11年6月、文藝春秋を相手取って書籍『ユニクロ帝国の光と影』の発行差し止めと回収、謝罪広告と2億2000万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。ファストリが問題としたのは、文藝春秋が発行する「週刊文春」(10年5月6、13日号)が掲載した記事『ユニクロ中国「秘密工場」に潜入した!』と、同記事執筆者であるジャーナリストの横田増生氏が書いた同書である。「文春」記事は、ユニクロの国内店舗や中国の生産委託工場における過酷な労働環境を告発している。
裁判では長時間労働とサービス残業の有無が争点となった。東京地裁は13年10月18日、原告であるファストリの請求をすべて退け、国内店舗の労働環境に関して「繁忙期のサービス残業を含む月300時間超の労働は真実」と認定。また、中国の工場での劣悪な労働環境を指摘した部分についても「真実相当性がある」とした。
これを受け、ファストリはただちに控訴。東京高裁は14年3月26日、一審判決を支持し、同社の控訴を棄却した。そして最高裁第3小法廷(大橋正春裁判長)は今月9日付で、同社の上告を受理しないと決定した。これで同社の賠償請求を棄却した2審、東京高裁の判決が確定したことになる。