デバイス事業はBtoCに比べて高マージンが期待でき、安定性があるため、このまま注力すべき 「花形事業」 だ。一方のテレビ事業は、PC事業に次いで売却したほうがいい。家電の単一事業は海外メーカーとの長期的な競争に耐えられない、事業ポートフォリオ・セオリーで「負け犬事業」だからだ。
銀行・保険・不動産などの金融事業を「キャッシュ・カウ(金のなる木)事業」として、ここから出てくる資金を活用して新しい組み合わせ事業を開発する。現有の事業として映画や音楽などのコンテンツがあり、モバイルなどの通信技術がある。ソニーのITデジタル技術は、まだ一流だろう。加えて「プレイステーション」は世界を席巻しており、さまざまなサービスやコンテンツを消費者へ提供するプラットフォームとして使える。
ソニーはこれらのハード、ソフト、コンテンツを組み合わせ、新しいビジネスモデルを提案できる。そのためには、エレキ部門の単一製品レベルの枠を超えるものでなければならない。現有の個別事業のそれぞれを「プロブレム・チルドレン(問題児事業)」と捉えて、組み合わせ糾合により「スター(花形事業)」を現出させるのだ。
歴代社長の罪
アップルがソニーを凌駕してきたものは何か。iPodで音楽の楽しみ方を提案し、iPhoneでスマートフォンの世界を切り開いた。しかし、アップルは既存技術とコンテンツ、その提供方法を組み合わせて、新しいビジネスモデルとしてプロモートしたにすぎない。個々の技術分野で新たに開発をしたわけではない。ソニーは、これらの新世代的な製品について、構成要素としてはすべて保有していたし、それぞれの分野では凌駕していた。拱手傍観していた出井伸之氏以降の歴代社長の罪は重い。
主要部門がエレキであり、そこへの回帰が王道だと考えられている間は、ソニーの本格的な復活はない。新しいビジネスモデルをひっさげ、「新生ソニー」として再登場する必要がある。「新しい器」には「新しい酒」が入らなければならない。そして「新しい器」には当然、新しい経営者が必要である。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)