3月末に開催された大塚家具の株主総会では、役員人事をめぐって委任状争奪戦が繰り広げられた。その結果、「経営改革」を掲げた久美子氏が機関投資家の賛同を集め、再任された。
関係者によると、久美子氏は勝久氏には引き続き最高顧問などの立場で社内に残ってもらう方向で調整中だという。しかし、勝久氏についた勝之氏と数人の幹部社員については、株主総会直後に人事部付に異動させ、法令順守などの面で問題がなかったか社内で調査している、といわれる。事情に詳しい関係者が明かす。
「勝之氏や管理本部長ら数人の主要幹部は例の株主総会前、業務を放棄して勝久氏が霞が関ビルに借りた部屋に籠り、大口株主への働きかけに没頭していました。この行為が就業規則に違反していると久美子氏は問題視していて、最悪の場合は懲戒解雇などの処分が下る見込みでした」
久美子氏の厳しい姿勢を察知した勝之氏らは処分前に退社した。そのうえで、高級家具の販売会社の設立準備を進めているのだという。「新会社には、委任状争奪戦で勝久氏を応援した家具メーカーなども商品提供で協力する意向だということです。勝久氏や勝之氏にとって、新会社は久美子氏の経営路線に反対する社員や取引先の受け皿としても活用できる存在にもなるわけで、久美子氏を揺さぶる考えではないか」と関係者はみている。
久美子氏の経営路線は、業界内部でも評価が真っ二つに分かれている。大塚家具の発行済み株式の約3%を保有する業界大手のフランスベッドが総会で勝久氏を支持したように、業界内では勝久氏が唱える「利益率の高い高級路線を追求すべきだ」との声が多いのも事実である。
株主総会前にテレビや新聞に数多く登場し、「カリスマ父からの脱却」を理路整然と訴えた久美子氏は一躍有名人となった。しかし、その足元では、今回の騒動を嫌気した馴染みの顧客だけでなく、業界全体の“大塚家具離れ”を進行させたこともまた間違いない。
弟らによる「大塚家具分裂」の動きもあわせ、久美子氏は今後、経営者として真の正念場を迎えることとなりそうである。
(文=編集部)