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資源量は世界3位、発電比率は0.3%…三井不動産と大成建設が挑む「次世代地熱」の到達点

2026.10.17 06:00 2026.10.16 22:40 経済
文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=佐伯俊也/エネルギー政策研究家

資源量は世界3位、発電比率は0.3%…三井不動産と大成建設が挑む「次世代地熱」の到達点の画像1

●この記事のポイント
三井不動産らは2026年10月、鹿児島県指宿市で同軸二重管型クローズドループ方式の地熱発電の掘削を完了した。27〜28年度に実証を行い、早ければ29年度の商用化を目指す。大成建設は9月、CO2を熱媒体とする地熱発電の実現可能性調査に着手。熱水に頼らない2つの次世代地熱技術について、強みと課題、国の導入目標(2050年に7.7GW)を比べて検証する。

 日本の地熱資源量は約2347万kWで、世界3位とされる。ところが、国内の発電電力量のうち地熱が占める割合は約0.3%(2022年度)にすぎない。資源はあるのに使えていない状態が、もう何十年も続いている。

 ここにきて、2つの大手企業がこの状況を変えようと動き出した。三井不動産は10月14日、鹿児島県指宿市で「同軸二重管型クローズドループ方式」の実証に必要な掘削を終えたと発表した。その約1カ月前の9月8日には、大成建設がCO2を熱媒体に使う地熱発電の実現可能性調査(FS)に着手している。

 デベロッパーとゼネコンでは、本業も技術の筋もまるで違う。両社の公表資料をもとに、それぞれの到達点と課題を整理してみたい。

●目次

なぜ日本の地熱は増えなかったのか

 従来型の地熱発電が成り立つには、3つの自然条件が必要になる。地下の「熱」、その熱を地上に運ぶ「熱水・蒸気」、そして熱水を地下にためておく「器(貯留層)」だ。このうち地表から確かめられるものはない。調査井を掘っても、十分な蒸気が出ずに撤退する例は珍しくない。

 有望な地点の多くは国立・国定公園や温泉地と重なっている。そのため、自然公園法や温泉法の手続き、温泉事業者との合意形成に長い時間がかかる。調査から運転開始までは10年以上が一般的とされる。しかも資源エネルギー庁によれば、1地点の出力は1万5000kW程度と小さい。リスクが高く時間もかかるのに、規模は大きくならない。地熱が伸びなかった理由はこれに尽きる。

 国も方針を改めた。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、次世代型地熱を「地熱ポテンシャルを現状の4倍以上に拡大する可能性がある技術」と明記した。同年4月には官民協議会が発足している。ロードマップの目標は、2030年代早期に次世代型の運転を始め、2040年までに1.4GW、2050年までに7.7GWを導入すること。2040年度の電源構成の見通しでは、地熱の比率を1〜2%程度に引き上げるとしている。

三井不動産:地下の水に触れない「密閉管」

 三井不動産、新日本科学、ジャパン・ニュー・エナジー(JNEC)の3社が採用したのは、1本の坑井に内管と外管を重ねた「同軸二重管」を入れる方式だ。地上から送り込んだ水を管の中で循環させ、地中の熱で温めて取り出す。地下の熱水や蒸気、それに含まれる成分を地上に出さない点が最大の特徴になる。必要な自然条件は「熱」の一つだけ。ここが従来型との決定的な違いだ。

 実証の場所は「メディポリス指宿」。新日本科学が2015年から地熱発電所を運営している土地で、2025年度は温泉発電と合わせて年間約1400万kWhを発電した。地下の情報と運営の経験がすでにある場所を選んだことは、実証のリスクを下げるうえで理にかなっている。

 報道によれば、2026年度後半に実証プラントを着工し、27〜28年度に実証を行い、早ければ29年度に商用化を目指す。実現すれば国内初になる。

 ただし、温泉法上の扱いには注意が必要だ。熱水をくみ上げない方式を温泉法の対象外と整理できるかどうかは、関係省庁がいまも議論している。規制が自動的に外れるわけではない。

 技術面の課題もはっきりしている。

「クローズドループは、管の壁を通した熱伝導だけで熱を集めます。岩盤の中で熱が伝わる速さには物理的な上限があるので、1本の井戸から取れる熱量はどうしても限られる。長く運転すると管の周りの岩盤が冷えて、出力が落ちていくことも考えておかなければなりません。商用化の分かれ目は、掘削コストをどこまで下げられるか、そして複数の井戸をどう組み合わせるかでしょう」(エネルギー政策研究家・佐伯俊也氏)

大成建設:CO2を「熱を運ぶ流体」にする

 大成建設は2021〜25年度の5年間、地熱技術開発(GERD)と組んで、JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)の研究事業として基礎研究を進めてきた。高温の地層にCO2を圧入し、地下で超臨界状態になったCO2を循環させて熱を回収する仕組みだ。超臨界CO2は粘り気が小さく、岩盤の細かい亀裂に入り込みやすい。そのため、効率よく熱交換できると考えられている。圧入したCO2の一部は貯留層の中で炭酸塩鉱物などとして固定されるため、採熱とCO2の固定を同時に狙える。

 大成建設は、CCS(CO2回収・貯留)でCO2が地下でどう動くかを数値解析する技術を長年手がけてきた。地下の流体挙動を読む力は、まさにゼネコンが得意とする分野だ。2025年12月にJOGMECのFSに採択され、今後は技術課題の整理、発電コストの試算、事業化までのロードマップづくりを進める。日本経済新聞は、事業化の目安を2040年以降と報じている。

「CO2を熱媒体として使うには、CO2をどこから安定して調達するかという問題が避けられません。CCSの輸送網や貯留の制度と一体で考える必要があります。加えて、人工的に貯留層をつくる過程では誘発地震のリスクを管理しなければならず、漏れがないかを長期にわたって監視する体制も欠かせない。技術的な意義は大きい一方で、社会実装には時間がかかる性質の技術です」(同)

両社の比較

項目       三井不動産ほか
熱媒体      水(密閉管の中を循環)
地下の熱水    使わない
現在の段階    掘削完了、27〜28年度に実証
主な強み     構造が単純で、地下環境への影響が小さい
主な課題     1本あたりの出力が小さく、熱の減衰もある

項目       大成建設
熱媒体      超臨界CO2(地層に圧入して循環)
地下の熱水    使わない(熱水量が足りない高温サイトが対象)
現在の段階    FSに着手、事業化は40年以降が目安
主な強み     採熱効率に期待でき、CO2の固定も狙える
主な課題     CO2の調達、誘発地震の管理、漏出の監視

 この比較からわかるのは、両者は同じ土俵で勝ち負けを競っているわけではないということだ。三井不動産の方式は、商用化に近い位置から「熱水がなくても地熱を使える」ことを示す役割を担う。大成建設の方式は、より長い時間軸で、地熱とCO2の削減を結びつける可能性を探っている。段階も役割も違う。

デベロッパーが地熱を手がける意味

 地熱の最大の価値は、天候や時間帯に左右されずに発電できることにある。太陽光や風力は出力が変動するため、大量に導入するほど蓄電池や調整用の電源が必要になる。一方で地熱は、最初の掘削にかかる費用が重く、屋根に太陽光パネルを載せるような手軽さはない。どちらが優れているかではなく、互いに補い合う関係にある。

 需要の側でも変化が起きている。資源エネルギー庁は、米グーグルが自社のデータセンター向けに地熱発電所から電力を直接購入している例を紹介している。24時間使えるクリーンな電源に対しては、はっきりとした買い手が存在するということだ。

 三井不動産はリリースで、技術・施工・電力活用といった領域での協業や、「地域特性を活かしたまちづくり」との連携を掲げている。電気の買い手を自前で抱え、街をつくる力もあることは、ほかの発電事業者にはない強みだ。

 ただ、指宿でつくった電気を都市部のビルに届ける場合は、送電網を経由することになる。実際には電力購入契約(PPA)などの形をとることになるだろう。

「デベロッパーにとって地熱の価値は、発電事業そのものより、テナント企業の再エネ調達ニーズに応えられる電源を持つことにあります。ただ、地熱発電所の近くで工場やデータセンター、宿泊施設を一体で開発する地産地消型のほうが、送電の制約を受けにくく現実的かもしれません。地域にとっても、雇用や産業が生まれてこそ受け入れる意味が出てくるはずです」(同)

注目すべきは「29年度の数字」

両社の取り組みを「どちらが日本を救うか」という対決として見る必要はない。開発リスクの中心にあった「熱水があるかどうか」という問題を、異なる方法で外そうとしている点に本当の意義がある。

これから確かめるべき点は3つある。三井不動産の実証で、出力と発電コストがどの水準に収まるか。温泉法上の扱いがどう整理されるか。大成建設のFSで、CO2の調達と安全管理がどこまで具体的に描けるか。

資源エネルギー庁も強調しているとおり、次世代型であっても地域との共生が欠かせないことは変わらない。技術が地熱の壁をどこまで崩せるか。その最初の答えは、2020年代の終わりに見えてくる。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=佐伯俊也/エネルギー政策研究家)

【主な参照データ・出典】
三井不動産ほか ニュースリリース(2026年10月14日)
大成建設 FS着手のお知らせ(2026年9月8日)/2021年の開発着手リリース
資源エネルギー庁「地熱発電も『次世代』へ!」(2026年6月5日)
共同通信配信(高知新聞、2026年10月16日)

BusinessJournal編集部

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公開:2026.10.17 06:00