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木村隆志「現代放送のミカタ」

『貴族探偵』、若者層手放し「事件解決より笑いで勝負」の大バクチに一抹の不安…

文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト

 近年は毎クールのように「歴代最低視聴率を更新」するなど、何度となく打ち切りの噂も飛び交っていたフジテレビの月9ドラマが、無事に30周年を迎えた。節目の作品に選ばれたのは、相葉雅紀主演の『貴族探偵』。

 昨年の大みそかに『NHK紅白歌合戦』の司会にも抜擢された人気者を主演に立て、武井咲、生瀬勝久、井川遥、仲間由紀恵、滝藤賢一、中山美穂、松重豊と、超豪華な助演を配したことから、「絶対に失敗できない」勝負の一本である様子がうかがえる。

 注目の初回平均視聴率は、11.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、まずまずのスタート。ただ、インターネット上では「相葉が貴族に見えない」「豪華俳優の無駄づかい」などの厳しい声が目立ち、知人のコラムニストたちに聞いても「変化球すぎて見づらかった」「ネット反響狙いの小ネタドラマ」と歯切れが悪かった。

 つまり、悪くはないながらも、先行きに不安が残るスタートを切ったのだが、アニバーサリーにふさわしい成功を収めることはできるのか。

事件解決ものが多すぎる春ドラマ

 まず頭に浮かぶのは、月9+変わり者+事件解決=『HERO』『ガリレオ』の計算式。どちらも続編がつくられたほどのヒット作であり、同じ計算式から導き出された『貴族探偵』にかかる期待は大きいが、その先行きが順風とはいえない理由がある。

 放送前の前提としてアンラッキーだったのは、「春ドラマに事件解決ものが多すぎる」こと。なんと、今期20~23時台に放送される18作中9作が事件解決ものなのだ。ほぼ毎日、殺人事件が起き、刑事や探偵が解決する物語が放送されているだけに、「またか……」の感は強く、ズバ抜けて面白くなければ共倒れのリスクが大きい。

 また、視聴者は1クールで多くの事件解決ものを見るのではなく、よく見る人でも3~4作程度だろう。『貴族探偵』がほかの8作を上回り、選ばれなければいけないのだが、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系)、『警視庁捜査一課9係 season12』(テレビ朝日系)、『緊急取調室』(同)、『小さな巨人』(TBS系)などの力作ぞろいだけに苦しい戦いが待っている。

謎解きより笑いのセンスで勝負する『貴族探偵』

『貴族探偵』が希望を見いだすとしたら、全編を通じて漂う脱力したムードだろう。前述したライバル作は、いずれもシリアスな世界観の作品であり、明確な差別化になる。「シリアスなものばかりで疲れるけど、『貴族探偵』は気軽に見られる」という人はいるはずだ。

 人を食ったような上から目線の貴族、操り人形のような使用人、空回りしまくるダメ刑事、さらに、ポップなギャグやテロップがツボにはまるか、それとも、スベリまくるか……。事件解決の爽快感よりも、笑いのセンスが問われる勝負になりそうだ。

木村隆志/テレビ・ドラマ解説者/コラムニスト

木村隆志/テレビ・ドラマ解説者/コラムニスト

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

Twitter:@takashi_kimura

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