第1話では、「オープニングで武井vs.井川の変顔対決」「開始18分まで主人公が登場しない」「本当に最後まで推理も説得もしなかった」などの思いきった脚本・演出が目白押し。さらに、相葉の第一声を過去の主演作「ようこそ、わが家へ」にしたり、アリバイを聞かれたとき「さて……どこの美女とアバンチュールを楽しんでいたでしょうか」とキザなフレーズを言わせたりなどの小ネタも随所に見られた。
今後、期待されるのは、『HERO』で木村拓哉、松たか子、阿部寛、八嶋智人、大塚寧々、小日向文世、勝村政信、角野卓造が見せたハチャメチャなやりとり。芸達者な俳優たちを生かすためには、さじ加減を考えてまとめるよりも、どんどんエスカレートさせて笑いやツッコミどころの数を増やすほうがいいだろう。
月9のラブストーリーは若者に浸透し始めていた
2015年以降、月9は『恋仲』『5→9~私に恋したお坊さん~』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』『ラヴソング』『好きな人がいること』『カインとアベル』『突然ですが、明日結婚します』と、ラブストーリーを立て続けに放送していた。
しかも、そのほとんどが10~20代の若年層をメインターゲットに据えた作品だ。若年層はスマートフォンやパソコンで視聴する人が多いため、視聴率にはつながらなかったが、「見逃し配信などの数値は連ドラトップクラスだった」といわれている。
つまり、若年層に月9のラブストーリーが浸透し始めていたのだが、今期の『貴族探偵』は一転して事件解決もの。さらに近年、ラブストーリーのヒット作は、山崎賢人や福士蒼汰など“20代前半の俳優”が主演を務めていただけに、“34歳のアイドル”相葉の人気がそのまま当てはまるとも思えない。
視聴率を手堅く獲るために、ターゲット層が広い事件解決ものを選び、心をつかんでいたラブストーリー好きの若年層を手放した戦略がどう出るのか。フジテレビへのバッシングはいまだ強く、特にシンボル的な存在の月9は集中砲火を受けやすいだけに予断を許さない。
まずは、笑いの質と量に力を注ぎつつ、キャラクターの個性と魅力を際立たせること。さらに、どんなかたちでもいいから、ラブストーリーを期待していた若年層へのフォローも忘れないほうがいいだろう。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)
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