伸びしろ
事件のトリックはそこそこ面白いが、本格ミステリーでは決してないし、愛香の成長物語が主軸でもない。人気ミステリー作品の『古畑任三郎』(フジテレビ系)や『トリック』(テレビ朝日系)と比較すると主役のインパクトの弱さは致命的だが、これはもうどうにもならない。とすると、どこにもう少し伸びしろがあるかを勝手に考えてみた。
鼻形と常見慎吾(岡山天音)と冬樹和泉(田中道子)は役割をしっかりと果たしてくれていて、これ以上やると逆効果になる可能性大。使用人たちは劇中劇では面白いが、地の芝居が物足りない。まだまだ笑いの伸びしろがあるような気がする。相葉の突っ込みのタイミングやスルーの仕方が非常に重要だが、ここに期待ができないとすると、使用人だけで面白さを成立させる何かが欲しい。
中山美穂のコメディのセンスは未知数だが、劇中劇では笑える瞬間が少なからずある。だからこそ、地の芝居になると急に嘘っぽくなるのがもったいない。「召使い・田中」というキャラクターの筋が一本通れば面白くなりそうな気がする。大女優といわれる中山自身が田中という役を心から愛して、田中というキャラクターを突き詰めたらどうなるのか、見てみたい気がする。
あとはなんと言っても愛香。過去の武井咲の出演作のなかでは一番遊べそうな役で、回を重ねるごとに鼻形との掛け合いが少しずつ面白くなってきている。武井の魅力を増すためにも、もっと愛香で遊ぶべきではないかと思う。ゴライアスガエルの画像を見たときの反応とか、パックをしている最中の恍惚の表情など、ちょっとした部分の笑いのエッセンスが愛香を何倍にも面白いキャラクターにするのではないかと思う。武井のイメージをぶち壊すぐらいの愛香をつくれたら、視聴率はさておき、武井咲の一人勝ちになる予感もする。
(文=西聡美/ライター)