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“NHKの申し子”黒島結菜、朝ドラヒロイン抜擢は必然…すでにNHKで14作品に出演

文=上杉純也/フリーライター
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「黒島結菜オフィシャルInstagram」より

 2022年度前期の朝の連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK)のヒロイン・比嘉暢子役を、女優の黒島結菜が務めることが発表された。ドラマの舞台は、黒島の出身地でもある沖縄県で、その北部のやんばる地方(架空の町)になるという。

 ここでひとつ注目したいのは、ヒロインに抜擢された黒島だ。彼女のことを見覚えはあっても、ファンでなければその経歴や人となりまでは知らない人も多いのではないだろうか。そこで今回は、新朝ドラヒロイン・黒島結菜について深掘りしていきたいと思う。

 1997年3月15日沖縄県糸満市生まれの彼女は、小学生時代はバスケットボール、中学生時代はバドミントンや陸上に打ち込むスポーツ少女だった。そんなごく普通の女の子の運命が変わったのは2011年、中学3年のときである。母親から「社会に出たら、どんな職業でも自分のことをアピールするのはいい経験になる」と勧められ、地元のある企業のイメージガールコンテストを受けた。そこで特別賞の”沖縄美少女図鑑賞”を受賞し、同誌にモデルとして出演することになる。それが現在の事務所関係者の目にとまり、芸能界デビューを果たしたのである。

 翌12年4月から教養バラエティ番組『テストの花道』(Eテレ)に”マッシュ”のニックネームでレギュラー出演し、本格的に芸能活動を開始。当時はまだ現役の高校生で、沖縄と東京を往復する日々が続いた。それでも13年1月公開で沖縄復帰40周年記念作品『ひまわり~沖縄は忘れない あの日の空を~』で映画初出演。さらに同年1月クールの連続ドラマ『dinner』(フジテレビ系)の第9話にゲスト出演ながら、連ドラ初出演を果たすなど、まずまずの女優人生をスタートさせている。

 最初に注目を浴びたのは、13年11月から放送された1本のテレビCMでの好演だった。NTTドコモ「docomo LTE Xi」のCM『想いをつなぐネットワーク篇』に出演し、なかなか来ない彼をけなげに待つ少女を繊細に演じたのだが、セリフはなく表情と仕草だけで演じたのだ。”間に合わないかも”というせつない表情から、彼の「今出たよ」という連絡に喜ぶ姿は、まさに演技を超えたリアリティショーのそれであり、広く共感を呼ぶこととなったのである。

 そして、この後もCMでの快進撃が続く。14年12月には成海璃子の後任としてクラレ「ミラバケッソ」のCM、15年3月には能年玲奈(現・のん)の後を継いでカルピス「カルピスウォーター」のCMに起用された。

 その一方で、女優活動も本格化させた。14年7月期の『アオイホノオ』(テレビ東京系)で、待望の連ドラのレギュラー初出演を成し遂げると、15年3月公開の映画『あしたになれば。』(ユナイテッドエンタテインメント)で初主演(小関裕太とのダブル主演)を果たしたのである。

 結果的に現在まで映画は主演作を含め、すでに15本近くの作品に出演している。なかでも19年には、堤幸彦監督作の『十二人の死にたい子どもたち』(ワーナー・ブラザース映画)と、周防正行監督作の『カツベン!』(東映)という2本の話題作に重要な役どころで出演した。特に前者では、父親を溺愛するあまり、経営が傾いた父の会社を自らかけた保険金で立て直してもらおうと考え、自殺志願者の集いに参加するという難しい役どころを演じている。

 この作品は、密室での心理戦が見どころのひとつなのだが、そのなかで持ち前の演技力を発揮し、ひと味違う存在感を放ってくれている。まさに”黒島結菜ここにあり”といった感じであった。

朝ドラ、大河などNHK作品にたて続けに出演

 かたやドラマでも、連ドラのレギュラー以外のゲスト出演や単発ドラマなども含めると、すでに30本以上の出演歴がある。なかでも目立つのがNHKの作品だろう。朝ドラは『マッサン』(14年下半期)と『スカーレット』(19年下半期)、大河ドラマは『花燃ゆ』(15年)と『いだてん~東京オリムピック噺~』(19年)といったところだ。

 このうち『マッサン』では、わずか1週間だけの登場だったが、正義感が強く物怖じしない性格の”デコ”役を演じ、強烈なインパクトを残した。『スカーレット』では陶芸家であるヒロインのもとに弟子入りする松永三津役を演じ、話題になった。物怖じせず、押しが強い性格で、さらにヒロインの夫に恋心を抱く役どころだったため、SNSを中心に朝ドラファンをざわつかせたことは記憶に新しい。

 さらに、『花燃ゆ』で高杉晋作(高良健吾)の妻・雅、『いだてん』では主人公・金栗四三(中村勘九郎)の教え子となる村田富江を演じた。特に後者ではテニスや陸上競技で頭角を現し、一躍、競技会のアイドル的存在となる、華のある役だった。

 とはいえ、華だけでなく役柄上、飛んだり走ったりと運動神経抜群なところをリアリティ感に欠けることなく演じなければならない。そういう意味では、沖縄時代にスポーツ少女だった黒島にとってはお手の物だったといえる。

 さて、このほかNHKでは『孫のナマエ~鴎外パッパの命名騒動7日間~』(14年)、『戦後70年 一番電車が走った』(15年)、『恋の三陸 列車コンで行こう!』(16年)、『夏目漱石の妻』(16年)、『アシガール』(17年)、『戦争童画集~75年目のショートストーリー~』『閻魔堂沙羅の推理奇譚』『悲熊』(いずれも20年)、そして名作照明ドラマ『ハルカの光』と『流れ星』(ともに21年)と、14本もの作品に出演している。このうち『戦後70年 一番電車が走った』(15年)では阿部寛とともにダブル主演を務め、高い評価を得ている。

 さらに、土曜時代ドラマ枠の17年秋クール作品の時代劇『アシガール』では単独主演を果たしたが、この作品はのちに続編となるスペシャルドラマが放送されるほどのヒット作となった。演じたのは脚力だけが取り柄の女子校生・速川唯。この唯が戦国時代にタイムスリップし、愛する若君を守るため足軽となって戦場を駆け巡るという”超時空ラブコメ”で、生き生きと躍動した姿が実に印象的だった。

 また、ドラマ以外でもNHKの受信料制度をPRするミニ番組『受信寮の人々』に”黒島さん”役で登場したことがあるほか、ドキュメンタリー番組のナレーションでも引っ張りだこの存在になっている点は見逃せない。まさに”NHKの申し子”といった感じで、朝ドラヒロインに抜擢されるのは時間の問題だった。いや、むしろ当然の流れなのかもしれない。

 黒島がすごいのは、NHKのみならず民放の連ドラでも実績を残しているところだろう。16年7月クールの連ドラ『時をかける少女』(日本テレビ系)で主演の芳山未羽役を演じたほか、19年10月クールの『死役所』、20年4月クールの『行列の女神~ラーメン才遊記~』(ともにテレビ東京系)で、いずれも準主役を演じるなど、決して”NHKだけ女優”というワケでもないのである。

 その端正な純和風なルックスで、透明感やクールさも持ち合わせる。きりりとしたナチュラルな眉も特徴的だ。知性が顔から滲み出てもいる。漂わせる雰囲気は幅広い世代から好かれるタイプで、まさにNHKの朝ドラのヒロイン向き。故郷・沖縄を舞台にした作品で弾ける女優・黒島結菜が今から待ち遠しい。

上杉純也/フリーライター

上杉純也/フリーライター

出版社、編集プロダクション勤務を経てフリーのライター兼編集者に。ドラマ、女優、アイドル、映画、バラエティ、野球など主にエンタメ系のジャンルを手掛ける。主な著作に『テレビドラマの仕事人たち』(KKベストセラーズ・共著)、『甲子園あるある(春のセンバツ編)』(オークラ出版)、『甲子園決勝 因縁の名勝負20』(トランスワールドジャパン株式会社)などがある。

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