ピン芸人、あばれる君(34)の活躍がめざましい。最近では『アイ・アム・冒険少年』(TBS系)の「脱出島」などの企画で持ち前のガッツを発揮、絶対王者として君臨する一方で、現在Amazonプライム・ビデオで配信中の『ドキュメンタル シーズン9』にプレイヤーとして出演中。ピン芸人として全盛期を迎えつつある。
では、なぜ今、あばれる君がプチブレイクしているのか。ある放送作家は次のように語る。
「トーク番組では相変わらず空回りをすることで笑いを取っていますが、出川哲朗さんや狩野英孝さんなど、バラエティ番組にとって“空回り枠”は常に必要な人材。それに、最近のあばれる君はトーク力を磨くより、脱出島などで発揮するガッツ力に磨きをかけ、より面白くなってます。トークがうまい芸人は数多くいますが、ここまで予測不能で空回りが芸になっている人って意外と少ない。つまり、非常にニッチではありますが、その枠で売れているという印象です。
松本人志さんが選んだ一流芸人しか出演できないといわれている『ドキュメンタル』の最新シーズンにもしっかり出演できているのも、彼が今の時代にマッチしているという証かと思います。同番組内でもあり得ないほど空回りしていますし、ある異臭騒ぎまで起こします。実はこれ、現場で収録がいったんストップしてしまったそう。ちょっと空回りが過ぎて本人も反省しているようですが、それもまたあばれる君の魅力なんだと思いますね」
ポケモンに造詣が深く小学生のファンも多いので、バラエティで重宝される
では、そんなあばれる君は、いったいいつどこでブレイクしたのか?
あばれる君は駒澤大学在学中の2008年にお笑いアマチュア選手権大会で特別賞を受賞、ワタナベコメディスクールに特待生として入学。大学卒業と同時にワタナベエンターテインメントに所属し、芸人としての道を歩むようになったという。つまり意外にもデビュー時には、鳴り物入りのエリート芸人だったのである。
「正直、あばれる君が何をきっかけにブレイクしたのか、ちゃんと解説できる人はいないと思います(笑)。が、彼の魅力は意外にも、幅広い年齢層にリーチできている点だと思います。
最近では本来の得意とするピンネタをあまり披露できていませんが、もともとは“熱血ひとり芝居”という、暑苦しい男が空回りするひとりコントをやり続けていて、業界内での評価は高かったんです。いざテレビでチャンスをつかむと、本人自身がまさにそうした“空回りキャラ”だったので、MC芸人たちがこぞって面白がり、ブレイク。わかりやすく大汗をかいてくれるのも、制作サイド的には起用しやすかったんでしょうね。しかも、『ポケモンの家あつまる?』(テレビ東京系)という番組を長くやっていてポケモンに造詣が深く、また自身のYouTubeチャンネルでは小学生のファンも多い。これは、バラエティ界では非常に重宝がられます。
そもそも子どもやご年配の視聴者が親しみやすいあのビジュアルなので、幅広い世代にリーチできるのが彼の強みなんだと思います。芸人特有の面倒くさいトガリやプライドが一切なく、どの世代にもわかりやすい笑いを届けてくれるという意味では、王道の芸人さんといっていいのかもしれません」(前出の放送作家)
あばれる君には、お笑い第7世代の“おこぼれ”が回ってくることが多い
昨今のバラエティ界では、第7世代がいまだ大人気。あばれる君は芸歴的には第7世代ではないが、「笑いの種類が似ているため、第7のおこぼれが回ってくることが多い」と語るのは、あるテレビ局のバラエティ班ディレクターだ。
「今はお笑い第7世代が相変わらず大ブームで、彼らのスケジュールはなかなか取れないんです。あばれる君はお笑い第7世代には入らないですが、雰囲気は意外と似ている。鋭いトークで笑わすわけでもなく、過酷なロケではガッツを見せ、人をいじって笑いを取ったりもしない。“突っ込まない漫才”で人気を獲得したぺこぱにも通じる、“優しい笑い”とでもいうか……。なので、第7世代をブッキングできなかった場合、ひとつ上の世代のあばれる君にお鉢が回ってくることが結構あるんですよ。
また彼は、中学・高校の社会科の教員免許を持っており、『アイ・アム・冒険少年』で見せる視聴者目線に立ったわかりやすいリアクションは、まるで学校で大人気の先生の授業を受けているかのよう。見る者を置き去りにしない説得力と共感性がある。そう考えると、子どもたちから絶大な支持を受けているのも納得ですし、結果として親も巻き込むことで、好感度の高さにつながっているのだと思いますね」
広い世代から人気があり、まだまだ伸びシロも十分なあばれる君。熾烈を極めるお笑い界で、これからも大暴れしてくれそうだ。