連続テレビドラマ『絶対零度 未然犯罪潜入捜査』(フジテレビ系)の第2話が16日に放送され、視聴率は第1話から1ポイント減の9.6%(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。
元公安のエリート・井沢範人(沢村一樹)率いる「未然犯罪捜査班」の活躍を描く物語。警察が極秘に開発した「未然犯罪捜査システム(ミハンシステム)」が割り出した情報に基づいて殺人事件を犯そうとしている人物を捜査し、その犯行を未然に防ぐのが彼らの任務だ。
第2話でミハンシステムが「近い将来に殺人事件を犯す可能性が高い人物」と判断したのは、身よりのない料理人の藤井早紀(黒谷友香)。だが、早紀は13年も前からこども食堂の運営に携わるなど素行が善良で、ミハンチームの面々も「とても悪いことをするような人物には見えない」と戸惑う。
ところが捜査の結果、早紀は理不尽に殺されてしまった娘の仇を討とうとしていることが判明する。身よりがないと思われていた早紀には若い頃に産んで手放してしまった娘がおり、里親にもらわれた後も陰ながら成長を見守っていた。だが、その娘は山で山菜を集めている最中に誤って猟銃で撃たれ、そのまま死んだ。撃ったのは最高裁判所長官の小松原で、彼は誤射に気付いた後も早紀の娘を助けようとせず、当時起こっていた連続殺人の犯人に罪をかぶせて自らの罪を隠ぺいしたのだ。小松原は罪を逃れたまま裁判官を辞め、政治家への転身を図っていた。
これを知ったミハンチームの面々は、早紀に復讐を遂げさせたほうが世のためになるのではないかとの思いを抱くが、リーダーの井沢は「(早紀を)殺人者にはさせない」と宣言。井沢の一言で結束を高めたミハンチームは犯行直前の早紀を取り囲んで説得し、復讐をあきらめさせることに成功した。
ミハンチームの任務はあくまでも殺人事件を未然に防ぐことであり、過去の犯罪の真相を暴くことではない。早紀の復讐を逃れた小松原はのうのうと生き延び、政治家になろうとしている。正しいことをしたのに、スッキリしない結末だ。なるほど、正義とは何なんだろうと考えさせる系の警察ドラマなのかと納得しかけた瞬間、「まあ、お天道様はちゃんと見てんじゃないの?」と井沢が意味ありげな台詞を吐いた。
井沢が小松原の悪事をマスコミにリークして社会的に破滅させる、よくあるパターンかと思いきや、予想外の結末を迎えた。何者かが小松原を事故に見せかけて転落死させたのだ。
どう考えても井沢が怪しいが、誰かが小松原を始末してくれることを知っていただけという可能性もある。いずれにせよ、未然に殺人事件を解決するというオモテのテーマのほかに、法で裁けない悪を始末する仕事人的なウラのテーマがこのドラマにあるとすれば、おもしろさがグッと増すことは間違いない。
死んだとされる前シリーズの主人公・桜木泉(上戸彩)についても少しずつ明らかになり、ベトナムで何者かに拘束されて焼死したらしいことがわかってきた。彼女の遺品である手帳には何人かの人名や住所が書かれていたが、そのうち「ウサミ ヨウスケ」と「イザワ ノリト」が線で結び付けられていた。イザワ ノリトとは、言うまでもなく沢村一樹演じる本作の主人公の名前だ。果たして井沢は桜木の死と関わっているのだろうか。
ラストでは、ミハンシステムが井沢を危険人物として表示していたことが明らかになったが、同システムを推進する東堂定春(伊藤淳史)はこれを黙殺した。どうやら東堂にも何らかの思惑があるらしい。彼の首筋に刃物で切られたような大きな傷跡があるのも気になる。第1話は軽いノリだったこともあり、はみ出し者が集められた部署が事件を解決するというお決まりのドラマのように見えたが、第2話では何やら各キャラクターにただならぬ過去や秘密があることが示唆され、ダークな雰囲気が漂ってきた。こうした設定をうまく終盤まで引っ張ることができれば、警察ドラマとして一定の評価を得られるのではないだろうか。
第3話では、派手なアクションで悪者をなぎ倒すミハンチームの紅一点、小田切唯(本田翼)にスポットが当たり、彼女が抱えるトラウマが明らかになるようだ。いいストーリーを期待したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)