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『西郷どん』ネタは面白いが物語としてはイマイチ…大河なのに説明不足でわかりにくい

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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 鈴木亮平が主演を務めるNHK大河ドラマ『西郷どん』の第27回「禁門の変」が22日に放送され、平均視聴率は12.0%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。

 禁門の変は、「八月十八日の政変」で京都から追放され、政治的な主導権を失った長州藩が失地回復を目指して挙兵し、京に上った事件だ。武力を背景に無実を訴え、政局に復帰することを目的としていたが、最終的には京都御所を守備していた薩摩・会津・桑名の3藩の軍と戦闘になり、敗北した。

 ドラマではこの事件を軸に、西郷吉之助(鈴木)の動向を描いた。

 西郷は長州藩の穏健派・桂小五郎(玉山鉄二)と知り合い、藩内の過激派を説得すると話す彼を信用する。そして、御所を守護する役目に就いた一橋慶喜(松田翔太)にも桂を紹介し、長州との戦闘を回避するように働きかける。

 だが、その努力もむなしく長州は2000の兵を率いて上洛。薩摩藩の軍司令官である西郷は慶喜の命に従って薩摩藩兵に御所を守護させるが、攻撃してきた長州藩兵との間で戦闘が発生してしまう。無駄な戦いを避けたい西郷は、部隊の司令官である来島又兵衛(長州力)を部下に狙撃させ、残った長州兵に降伏を迫る。だが、駆け付けた会津藩兵が武器を捨てた長州兵に次々と襲い掛かり、戦闘は終わらなかった。さらに、幕府方は敗走する長州兵の行く手を阻むために火を放ち、京の町は炎に包まれていった――という展開だった。

 主人公らは望まなかったのに、あるいはやめさせようとしたのに、結果的にいったん動き出した流れを止めることはできなかった――という筋立ては、大河ドラマではよくあるパターンだ。主人公をなるべく善人に描くためのこの手法には賛否があると思うが、今回については話の筋は通っている。また、長州の暴発を止めなければ京が火の海になってしまうと思った西郷が必死に奮闘したのに、結局同じことが起きてしまうという皮肉な結末も良い。

 滑舌の悪さで知られるプロレスラー、長州力の台詞が意外にもはっきり聞き取れたり、彼の代名詞であるプロレス技「リキラリアット」を薩摩兵に炸裂させたりという、ちょっとしたネタも含めて出来が良く、楽しめる回だったといえる。

 ただ、歴史を題材としたドラマとしては、全体的に説明が足りないのではないかとの思いも抱いた。西郷が蚊帳の外だった「八月十八日の政変」が描かれなかったのは仕方ないのだが、そのせいで長州が薩摩に恨みを抱いている理由も、長州が兵を率いて上洛してくる理由もわかりにくい。

 会津藩が京都の治安維持を任されていることも、その配下に新選組がいることも説明しないままに突然、会津藩や新選組が登場してくるのも、あまりにもドラマとして不親切だと思う。そもそも、この時点で薩摩と会津が同盟関係にあったことを、意図的に省略しているのも良くない。この前提がないため、会津兵が空気を読まずに長州兵を殺害した悪者みたいになってしまっているのだ。

 もちろん、この時点で薩摩と会津の同盟関係に触れてしまえば、後からそれを破棄して長州と手を組む薩摩を裏切者として描かざるを得ないという、脚本上の事情があることはわかる。だが、「西郷を革命家として描く」と大風呂敷を広げるのなら、大義のためなら藩同士の盟約も反故にするブラックさを描いてもいいのではないだろうか。西郷や薩摩を良く描こうとするあまりに、物語としてのおもしろさやわかりやすさが損なわれては本末転倒だと思う。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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