綾瀬はるか主演の連続テレビドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)の第5話が7日に放送され、平均視聴率は前回から0.9ポイント増の13.1%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。
このドラマは、バリバリのキャリアウーマンだった岩木亜希子(綾瀬)が子持ちのサラリーマン・宮本良一(竹野内豊)と結婚し、良一の娘・みゆき(横溝菜帆)の母として奮闘する物語。
第5話は、スキルス性の胃がんを患っている良一の病状が、というより生死が焦点となった。そもそも良一が亜希子と結婚したのは、余命少ない自分の代わりにみゆきを育ててくれる母親を必要としていたからだ。みゆきには病気のことを隠し続け、普通に日常生活を送ってきたが、病状の悪化によりついに第4話のラストで倒れてしまった。ドラマの展開から考えれば、今回の第5話で良一が死んでしまうのではないか、と予想していた人も少なくないはず。
だが、結論からいえば、良一は第5話では死ななかった。むしろ、放射線治療を受けて腫瘍マーカー値が下がり、退院して家に戻ることができた。そろって帰宅した3人は、みゆきの提案で初めて川の字になって寝た。良一の入院という大きなハードルを協力し合って乗り越えたことで、良一と亜希子の間には強いきずなが生まれていたのだ。
寝てしまったみゆきをはさんで、「もし僕が治っても、一緒にいてくれますか?」と亜希子に尋ねる良一。亜希子も「本当に私で良いのですか?」と、良一の“2度目のプロポーズ”を受け入れた。
当初は亜希子を受け入れられなかったみゆきも今ではすっかり打ち解け、仲の良い親子になっている。良一と亜希子も、契約結婚ではありながらも普通の夫婦以上に信頼し合う良きパートナーとなった。タイトルこそ『義母と娘のブルース』だが、実際には心温まる親子3人の姿を描くドラマなのではないか、実は良一は死なないのではないか――。そんな希望すら湧いてきた。
だが、そんなはずがないこともわかっている。良一が途中で死ぬことは原作を構成する重要な要素であり、そこを改変すればドラマも成り立たないはずだからだ。確かに、いくらお話とはいえ、良一の病状が奇跡的に良くなったのはうれしい。幸せな3人を見ているだけで、見ているこちらまで温かな気持ちになれる。だが、その一方で「あっさり亡くなったほうが良かったのに」と思ってしまう自分もいた。第5話で良一が死ぬことはある程度覚悟していたため心構えができていたが、ここでヘタに希望が見えてくると、いざ亡くなった時に余計に悲しくなるからだ。森下佳子氏も、罪な脚本を書くものだ。
そして迎えたラスト。良一と亜希子はみゆきを学校に送り出した後、電車に乗って写真スタジオを訪ねた。3人で家族写真を撮るための衣装合わせをするためだ。亜希子が先に呼ばれ、良一はその背中を見送りながら「奇跡だな、こんな」とつぶやいた。第5話はここで幕切れとなり、良一の死が描かれることはなかった。
これはあまりにも予想外だった。いずれは避けられないと思われる良一の死をまだまだ引っ張るつもりなのだろうか。ひたすら娘の幸せを願う、優しくて穏やかな父親を演じる竹野内の演技をもっと見ていたいとは思うが、これ以上幸せな家族の姿を見せられたら、良一との別れがつらくなりすぎる。
今回は本編の後に次回の予告映像が放送されなかったため、そんなモヤモヤした気持ちを抱いたまま公式サイトを開いた。すると、次週の第6話から第2章が始まることがわかった。第5話から10年が経ち、みゆきは高校3年生になっているのだという。そして、良一の姿はそこにはすでにないようだ。つまり、「良一の死」そのものは描かないということなのだろう。
視聴者の誰もが涙するであろう場面をあえて省略する脚本と演出に、感嘆させられる。並のドラマなら「肝心の場面を省くなんて」と批判せずにはいられないところだが、このドラマならうまくやってくれるはずだ。きっと、良一が死ぬ場面を直接的に描くより何倍も我々の胸に迫るような涙と感動のシーンが待っているはず、と信じたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)