連続テレビドラマ『絶対零度 未然犯罪潜入捜査』(フジテレビ系)の第7話が20日に放送され、平均視聴率は前回から0.3ポイント減だったものの、5週連続2桁台となる10.3%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。
このドラマは、元公安のエリート・井沢範人(沢村一樹)率いる「未然犯罪捜査班(ミハンチーム)」の活躍を描く物語。警察が極秘に開発した「未然犯罪捜査システム(ミハンシステム)」が割り出した情報に基づいて殺人事件を犯そうとしている人物を捜査し、その犯行を未然に防ぐのが彼らの任務だ。
ミハンチーム発足当初からのメンバーだった田村薫(平田満)が自殺するという衝撃的なラストを迎えた第6話を受けて、第7話はどんなストーリーが展開されるのかと期待したが、率直に言って冒頭ではやや拍子抜けしてしまった。井沢があまりにも軽く田村の死を片付け、普段の業務に戻ろうとしているように見えたからだ。いつまでも「田村さん、田村さん」と引きずられてもうっとうしいが、まるでいなかったかのように振る舞われても、「いったい、あれはなんだったのか」となってしまう。
今回の脚本はここを、「淡々と仕事をする井沢らと、それに疑問を抱く南彦太郎(柄本時生)との対立」という構図で描いてみせた。もともとミハンチームの人員ではなく、必ずしも協力的ではなかった南は、井沢や小田切唯(本田翼)らに「どうしていつも通りいられるんですか?」といら立ちを隠さない。そして、自分なりに同じチームの一員だと感じていた田村が自分たちに何も打ち明けずに犯罪者への私的制裁に走り、自死して果てたことにやり場のない怒りを抱き、ミハンチームを離れようと決意するのだった。
田村が死んだときにあれほど取り乱していた小田切までもが、淡々と日常の業務に戻るのは、南が言う通り不自然にも見える。だが、南の指摘によって、ミハンチームの面々が田村の死を悲しんでいないわけではなく、むしろあまりにも深い悲しみと喪失感を乗り越えるために相当の無理をして普段通りに振る舞っていたことが逆に浮き彫りになった。明らかにミハンチームのメンバーはこれまで以上に犯罪者への憎悪の念が強くなっており、危険な香りが漂っている。
南と他のメンバーとの「対立」は、警察署内でのパソコン操作のみを担当していた南が正義感に駆られ、初めて外に出て体を張って子どもを助けようとした――という結末で解決を迎えた。田村の死が南の心境にも変化を与えたのかは定かではないが、形としては田村が退場した代わりに南が主要メンバーに昇格するべく覚醒した、ということになる。
主要メンバーが欠けた穴を埋める必要があるのだから、当然のなりゆきともいえるが、別に柄本時生にスポットを当てなくても……という気もしてしまう。人の外見をどうこう言うのはあまり良くないが、少なくとも彼はイケメンではないし、もし役者ではなく一般人だったらかなり敬遠されてしまうタイプだとは思う。脇役としてはいい味わいを持っているが、視聴者の中には「柄本時生が苦手」「あんまり登場してほしくない」といった声もある。
第7話では、田中道子演じる女性刑事・板倉が、南に好意を抱いているかのように見えるワンシーンもあった。恐らくさほど深い意味のないエピソードだとは思うのだが、柄本が南を演じているせいで、「板倉はブサイク専」という意味がこのシーンから生まれてしまっている。別にブサイク専でもいいが、そんな設定がこの後生きてくるとも思えない。南という役柄が最後まで脇キャラだったのなら柄本でもいいと思うが、後半で覚醒したりスポットが当たったりするキャラクターだったのなら、もう少し見た目の良い若手俳優が良かったのではないか。
さて、第7話のラストでは、井沢の妻と娘を殺害したものの立証されず、別件逮捕されていた宇佐美の出所が描かれた。門の外で待ち構えていた井沢は、冷たい目で彼をまっすぐに見据え、「誰に頼まれた?」と有無を言わさぬ口調で尋ねた。ここで幕切れとなったためその答えは明かされなかったが、井沢が今でも強い怒りを感じていることが感じられる場面だった。事実、井沢はこの少し前の場面で、自分を守るために罪のない子どもを殺害しようとした犯罪者に激高し、ボコボコにして馬乗りになり、今にも首を絞めて殺そうかという勢いで激しくののしっていた。
幸いにも山内徹(横山裕)に止められて事なきを得たが、悪への怒りにスイッチが入ると自分を止められなくなってしまうようだ。となると、やはり井沢が宇佐美に復讐して闇落ちするバッドエンドになるのかとも思えるが、どうやらそう簡単な話でもないようだ。井沢の妻と娘が殺害された事件と、桜木泉(上戸彩)が海外で不審な死を遂げたとされている事件には、何らかのつながりがあることがわかってきたからだ。さらに、第8話からは桜木の元上司役として北大路欣也が出演すると予告されている。視聴者の間では早くも「キャスティング的に北大路欣也が黒幕」という説も流れているが、果たしてその通りなのだろうか。ますます盛り上がる終盤の展開に期待したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)