フジ『黄昏流星群』ヤバ面白い！不倫中の父が娘とラブホで遭遇！妻もその娘の婚約者と不倫！

『黄昏流星群』公式サイトより

　連続テレビドラマ『黄昏流星群』（フジテレビ系）の第4話が1日に放送され、平均視聴率は前回から0.4ポイント増の6.5％（ビデオリサーチ調べ、関東地区）だった。このドラマは、融資先に出向になった元銀行員・瀧沢完治（佐々木蔵之介）と、母親を介護しながら食堂で働く目黒栞（黒木瞳）を中心に、人生や恋に葛藤する男女を描く作品だ。

　当初はバカバカしい「ネタドラマ」路線で突っ走っていたが、第3話あたりから結構、落ち着いてきた。不倫劇を繰り広げるはずの完治と栞の2人が、意外と“まともな”中年なのである。第4話でも、この路線は継続された。栞は認知症の母親が入居している施設に足しげく通い、自分のことをすっかり忘れてしまった母親をかいがいしく介護する。「少しくらい顔を見せなくたって、どうせ覚えていないのだからいいだろう」とは考えないらしい。実の親とはいえ、そこまで自己犠牲的になれるものだろうかと、感心してしまう。

　妻子がいながら栞に惹かれていく完治も、実はそんなに悪い人間ではなかった。出向先で「銀行さん」とよそよそしい呼び名で呼ばれ、あからさまに無視や差別をされても、なんとか溶け込もうと努力する。揚げ句の果てには、下っ端の女性社員から小ばかにされながらも、書類のつくり方を素直に教わっていた。けなげである。

　ちょっと羽目を外して日曜日に栞とデートを計画するが、その内容はどこかの山でのハイキング。健全すぎて逆に驚く。ところが、「さあ、これから山に登ろう」としたその時、栞の母親が施設で転倒してケガをしたとの連絡が入る。栞は「せっかくのデートだから、そのまま山に登ろう」と提案するが、完治は「デートを中止して様子を見に行くべきだ」と言って譲らない。大抵の男なら、「今すぐ見に行ったって何も変わらないんだら、後でいいじゃん」と、デートを優先しそうなところである。「超」が付くくらい、“いい人”だ。妻に嘘をついて、ほかの女とハイキングに出かけたのは良くないかもしれないが、根本的にマジメな人間なのだろう。

　栞は仕事と介護だけで日々が終わる生活に閉塞感を感じているに違いないし、完治も毎日大変なストレスにさらされながら必死に働いている。この2人を見ていると、別に不倫ドラマじゃなくて、佐々木蔵之介と黒木瞳で、普通に中年の悲哀とささやかな喜びを描くような渋いドラマでもよかったんじゃないかなあという気がしてくる。それで10話持たせるのはキツイかもしれないが、それくらいこの2人が描き出す等身大の中年像は、なかなか人間くさい魅力にあふれている。

　さて、実際にはそんな「いい話」的にドラマが進行するはずもなく、波乱の要素が次々に描かれていく。完治の妻・真璃子（中山美穂）は、山に行ったはずの夫の靴がまったく汚れていないことに気付き、浮気の疑いを深める。一方、そんな真璃子も、娘の美咲（石川恋）の婚約者である日野春輝（藤井流星／ジャニーズWEST）に胸がときめくのを隠せない。春輝の態度も思わせぶりだし、どうやら美咲にほかの相手がいることを疑っている様子だ。

　そんななか、完治と栞の関係も急速に進展し、2人でホテルに入るまでの仲に。部屋に向かうエレベーターには、初老の男性と若い女性のカップルが先客として乗っていた。上昇していくエレベーターの中で、完治は若い女性が娘の美咲であることに気付き、美咲も父が知らない女と一緒であることに気付く。父と娘が互いの不倫現場に遭遇するとは、なかなかのシチュエーションである。「もし自分だったら」と考えるといたたまれないが、ドラマのなかでの話なので「うわ、ひどいなこれ。どうするんだろ」とおもしろがっていればいいので気が楽だ。

　しかし、実際にこんなことがあったら、翌日から家庭内で互いにどうやって過ごせばいいのだろう。やはり、「お互い様なので何も見なかったことに」と口裏を合わせるのが正解なのだろうか、などと考えてみても仕方がないのだが、他人事ゆえのおもしろさがある。自分では絶対に経験したくないような修羅場を、高い位置からおもしろがって見物するというのが、このドラマの正しい楽しみ方なのかもしれない。

　ドラマ公式サイトで公開されている次回予告映像を見る限り、次回は真璃子と春輝が道ならぬ関係に陥ったり、かと思えば栞の存在が真璃子にバレたりと、さらなる波乱の展開があるようだ。当初はおバカ全開のネタドラマを装っていたが、実はなかなか丁寧につくられていることを踏まえれば、ここからじわじわと視聴率を伸ばす可能性も大いにある。
（文＝吉川織部／ドラマウォッチャー）