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『いだてん』驚異的なテンポのよさに感服…前作『西郷どん』と段違い

文=吉川織部/ドラマウォッチャー

 NHK大河ドラマ『いだてん』の第2回が13日に放送された。初回では日本人を初めてオリンピックに送り出そうと奮闘する嘉納治五郎(役所広司)をメインに描き、主人公である金栗四三(中村勘九郎)はラストに登場しただけだったが、第2回は年代をさかのぼって金栗が生まれたところからを描いた。

 金栗家は代々酒造業を営んできたが、四三の父の代で廃業。7人きょうだいの6番目として生まれた四三は体が小さく、山道を走って毎日学校に行くのが苦痛でたまらなかったという。

 後に偉人となった人物が幼少期は貧乏で体も弱かったという話はありがちである。なるほど、『いだてん』もひとしきりこのエピソードを描くのかと思いきや、四三はあっという間に独自にランニングに適した呼吸法を編み出して走るのが得意になり、学力も優秀だったために海軍兵学校を目指すまでに成長した。このテンポのよさはすごい。

 結局、視力が足りなかったために海軍兵学校には受からず、四三は別の道を探すことに。そんな時、友人が受験しようとしていた東京高等師範学校の校長が嘉納治五郎であることを知り、四三の心は揺さぶられる。少年時代、「嘉納治五郎に抱っこされれば体が強くなる」という噂を信じて父と2人で出かけたことがあったからだ。実際には抱っこしてもらうどころか近づくことすらができなかったが、父も四三も家族に本当のことは言えなかった。

 あこがれの嘉納先生のもとで学べるというのが動機になったのかまだ定かではないが、四三は第3回で早くも東京に向かうようだ。繰り返すようだが、テンポが速すぎて「これで50話弱もつのかな」と心配になってくるほどだ。とはいえ、重要でないエピソードに尺を割きすぎて見せ場となるべき部分が駆け足になってしまった前作『西郷どん』のような例もある。序盤におけるこのテンポのよさは、後々の見せ場をじっくり描くためのペース配分だと信じたい。

 テンポのよさばかりを言うようだが、内容も脚本のクドカン(宮藤官九郎)らしさが存分に発揮されていた。なかでも、嘉納が四三を抱きかかえてハグした初回のラストシーンと、少年時代の四三が嘉納に抱っこしてもらえなかったエピソードが対比になっている構成はうまかった。嘉納は素晴らしい選手を見つけた喜びでいっぱいだったのだろうが、四三はそれとは違う感慨を持っていたに違いない。あこがれの人に認められた喜びももちろんあっただろうし、父との思い出も脳裏を駆け巡っていただろう。うそがまことになったことへのホッとするような気持ちもあったかもしれない。まだたった2話しか放送されていないのに、すでに「1話のあのシーンにはこんな意味があったのかも」と想像できるとは、なんと楽しいことだろうか。

 ほかにも見どころたくさんで、45分があっという間に過ぎた。特に、四三の幼なじみ・春野スヤ役で登場した綾瀬はるかの天真爛漫でかわいらしい演技と、明治時代の自転車を乗りこなす抜群の運動神経は、「さすが」の一言。視聴者からは、綾瀬が熊本弁で歌う「自転車節」が「クセになる」とか、「覚えてしまいそう」といった声も上がっているようだ。

 個人的には、「冷水をかぶれば風邪を引かない」と聞いた四三が井戸の水を何度もかぶる場面で、中村勘九郎の股間が窓の桟で隠されていたのがかなりツボだった。水の冷たさに跳ね回って結構移動しているのに絶妙に股間だけ窓の桟で隠れている映像はなかなかバカバカしくて楽しい。中村勘九郎は映画『銀魂』(ワーナーブラザース)でも股間を丸出しにするシーンがあったが、こちらはモザイク処理されていた。勝手な想像かもしれないが、今回の「窓の桟で隠すテクニック」は、「こうすりゃモザイクなんて使わなくていいんだよ」と『銀魂』にメッセージを送っているように思えて、ニヤニヤしてしまった。

 ビートたけし演じる古今亭志ん生と、森山未來演じる若き日の志ん生が語り手としてたびたび登場する構成も今のところかなりうまくできていると思うが、視聴者の間には「たけし不要」「落語パートいらない」といった反対意見もかなりあるようだ。これについては次回以降にふれたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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