ビートたけしの“並々ならぬ決意”
また、ビートたけし演じる古今亭志ん生がナレーションを務めるというキャスティングも当初から話題となっていたが、これもまた「わかりづらすぎる」というのは某制作会社のディレクターだ。
「第1話のストーリーは1959年のオリンピック招致が決まる前の東京が舞台ですが、同時進行で1909年にストックホルム五輪に日本が初めて選手を派遣する話も描かれました。ここでややこしいのは、ビートたけしさん演じる古今亭志ん生がナレーションを務める一方で、1909年の時代では若き古今亭志ん生を森山未來さんが演じ、同じくナレーションを務めてるんです。つまり、このドラマのナレーションは今のところその2人が入り乱れて務めることになっているのですが、まずこれがとてもややこしくて見づらい。それに加えて、たけしさんのナレーションを含めたセリフが、とにかく聞き取りづらいんです。この1月には72歳になったたけしさんに落語家役をオファーし、これだけの膨大なセリフをやらせること自体に無理があるとしか思えないのですが……」
“落語の神様”と呼ばれた古今亭志ん生をビートたけしが演じるというのは「まさに適役」といえなくもないが、実際に仕上がりを見ると、確かに聞き取りづらいシーンが散見される。昨今のバラエティ番組におけるたけしの滑舌は相当に悪いと感じるが、ナレーションともなると、正直、本当に何を言っているのかわからないシーンも多々あるのだ。
「普段から落語を愛し、実際に高座に上がることもあるたけしさんは、並々ならぬ思いで古今亭志ん生を演じているそうです。そのため、高齢で滑舌も悪いたけしさんの熱演を現場で披露されると、多少聞き取りづらいぐらいではNGを出せないんだと思うんです。しかもクドカンの脚本はただでさえセリフ量が多いので、余計に何を言っているのかわからない。
ここからは僕の想像なのですが、あまりにもたけしさんのナレーションが聞き取りづらいため、若かりし頃の古今亭志ん生を演じる森山未來さんにもナレーションを担当してもらうことになった……という経緯があったりするのではないでしょうか。本来ドラマの構成として、ナレーションが2つの時代にまたがって2人立つ……というのは、どう考えてもおかしい。この違和感は、大河ドラマ好きの年配の方だけではなく、全世代の視聴者に共通するのではないでしょうか」(前出のディレクター)
本来なら話題性に富んだキャスティングだったはずが、思わぬ波紋を呼んでいる本作のナレーション問題。これが事実だとすれば、今後の視聴率回復への見通しは暗いといわざるを得ないのかもしれない。
(文=藤原三星)
●藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>