NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺』の第4回が27日に放送され、平均視聴率は前回から1.6ポイント減の11.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。第4話は、後に日本人初のオリンピック選手となる金栗四三(中村勘九郎)が東京高等師範学校の長距離走で3位になり、本格的にマラソンに取り組むいきさつを描いた。
第4話のアバンタイトルでは、第1話にちらりと登場した「木陰で小用を足していたせいで競走に出遅れた学生」が、実は金栗であったことが明かされた。これで、第2話から第4話まで3話続けて第1話の伏線回収がなされたことになる。伏線といっても、ちょっとした小ネタではあるが、「今後ももっと大きな仕掛けがあるに違いない」と期待を持たせてくれるには十分だ。
金栗が小便をしていたせいで出遅れた件も、別にふざけたネタではなく、彼が「もっと上位を目指すためにはどうすればよいか」と考え、ひとつひとつ課題を解決していくという生真面目さを表すエピソードにつながっていた。当時流布していた「水抜き・脂抜き練習法」を試してみるもうまくいかず、「自然の欲求に逆らうのは良くない」と結論を出したという金栗の先進性を示すエピソードも興味深かった。
金栗は少し単純すぎて幼く見えるところもあるが、「やってみなければわからない」「まずやってみて判断する」という素直さと柔軟な姿勢は、好感が持てる。大河ドラマの主人公が備えるべき人間的な魅力は、今のところ十分満たしているといえよう。
一方で、ビートたけし演じる古今亭志ん生の日常生活や高座の様子を描く昭和30年代のパートについては、「わかりにくい」「必要性がわからない」「たけしの滑舌が悪くて聞き取りにくい」といった批判が少なくない。
これについてはゆくゆくじっくり書いてみたいと思うが、個人的にはどちらかといえば親切な構成だと思うし、志ん生をストーリーテラーにしたことの意味もしっかり用意されているはずだと信じている。第3話と第4話では、志ん生に弟子入りした五りん(神木隆之介)と金栗に、なんらかのゆかりがあることがほのめかされているため、この先あっと驚く仕掛けが待っているに違いない。
それぞれの回のストーリーと落語をリンクさせる構成も、かなりよくできている。今回は志ん生の酒好きと古典落語『芝浜』をリンクさせ、ラスト直前の高座のシーンでは『芝浜』を演じるように見せかけて明治44年のオリンピック予選大会について語り出す――という凝った構成になっていた。
ちょっと落語を知っている人なら、「なるほどそう来たか!」と手を打って大いに感心したことだろう。だが、世の中の誰もが落語に詳しいわけではない。「おもしろいけれど、ついて来られる人がどれだけいるのか」「クドカンの趣味全開すぎて、普通の人にはちょっとわかりにくいのでは」といった声は、落語ファンからも聞こえてくる。筆者自身も落語にはそこそこ詳しいつもりだが、やはり「これ、落語を知らない人が見ておもしろいのか?」と疑問には思う。
ただ、宮藤官九郎だってそんなことは先刻承知のはずだ。『いだてん』は、一般受けして高視聴率を取ることなど最初から狙っておらず、「クドカンドラマについて来られる人だけついて来て」というスタンスで割り切ってつくられているのかもしれない。「そんなのは大河ドラマとしてふさわしくない」という声もあるだろうが、視聴者側も早い段階で割り切ったほうが楽しく気軽に見られるのではないだろうか。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)