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『アタル』飼っていたカナリアを逃がす描写が炎上…「すぐ死んじゃう」「無責任」

文=吉川織部/ドラマウォッチャー

 杉咲花が主演を務める連続テレビドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)の第8話が7日に放送され、平均視聴率は前回から1.1ポイント減の9.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。

 このドラマは、あらゆるものが見える能力を持つ派遣社員・的場中(まとば あたる/杉咲花)が、その能力を駆使して周りの正社員たちが抱える悩みを解決していくお仕事コメディードラマだ。これまでアタルは自身が働くイベント会社の「Dチーム」に所属する6人の社員とその上司を1話で1人ずつ占い、彼らを救ってきた。

 だが、そんなアタルの前に立ちはだかるのが実母のキズナ(若村麻由美)。キズナはアタルの能力を利用して金もうけをしてきたが、アタルはそんな母親に嫌気がさし、家を出てひとり暮らしをしているのだった。だが、キズナは執拗にアタルを追い、再び金もうけの道具として利用しようとしているのだ。

 第8話は、そんなアタルとキズナの直接対決が描かれることが予告されていただけに、いよいよ2人の因縁が明かされて激動の展開になるかと視聴者の期待を集めた。

 だが、結論から言うと非常に期待外れであった。何もかも浅いのである。予告映像で注目された、今まで占ってもらった社員たちによるアタルへの「逆占い」も特になんのひねりもなくあっさり終了。大崎課長(板谷由夏)が「自分にしかできないことって、結局は見つけるものじゃなくて自分でつくるものなんじゃないかな」というわかったようなわからないような台詞を吐いただけで終わった。

 自分にしかできないことを「見つける」と「つくる」の間にそれほど違いがあるとは思わない。むしろ言い方を変えただけではないかとさえ思う。なにより、「自分にしかできないことがなければ会社に勤める意味がない」というキズナの主張に乗っかってしまっているところが非常に良くない。人と同じことを平凡にこなす働き方だって許されるべきだ。実際のところ、「自分の代わりは誰にもできない」という人はほとんどいないのである。

 ドラマ全編を通して一番の見せ場であると思われた、アタルが自身の能力でキズナを占う場面もいまひとつ盛り上がらず。インチキな占いで人々から大金をせしめるキズナにはどんな複雑な過去があるのかと思ったら、「『霊が見える』と出まかせを言ったらいじめられなくなった」というありがちなものだった。そんなキズナが本物の霊能力を持つアタルを産んだという設定も随分都合が良すぎる。

 アタルが母親を説得しようとして言う台詞も、「もうわかってる未来なんかほしくない。私が欲しいのは、真っ白なページの日記帳なの」など、どこかで聞いたようなものばかり。ところが、キズナはこれであっさり改心。アタルを手元に置くのをあきらめ、信者も去らせ、一から勉強して本物の占い師を目指すと宣言したのだ。

 キズナが“ラスボス”であるかのような演出をしてきただけに、よくわからない対決で急に態度を改める今回の結末には、大いに不満を感じた。1話完結のフォーマットにこだわりすぎたのではないか。キズナとの対決はラスト2話を使ってもよかったと思う。前週までの「社員を一人ずつ占って悩みを解決する」というテンプレ展開が意外と好評だっただけに、「急につまらなくなった」「尻すぼみ感が半端ない」と、視聴者からも批判の声が上がっている。

 第8話に関しては、キズナから自由になったアタルが飼っていたカナリアを逃がしたという描写がプチ炎上を招いていることについても触れておきたい。批判派の主な主張は、「カナリアを逃がしてもすぐに死んでしまう」「無責任な行為はやめてほしい」「飼っている鳥を逃がすのは犯罪ではないか」「視聴者に誤解を与える表現だ」というもの。

 一方、擁護派は「アタルの状況を描写するのには必要な表現」「放されたカナリアがすぐ死んでしまうように、自由になったアタルも一人では生きていけないという暗示では」「鳥を放すのが犯罪だから良くないというのなら、ドラマで殺人事件を描くこともできなくなる」と反論している。両方とももっともな意見だ。

 ただ、今回については、「鳥を放すことで自由を表現する手法が陳腐であること」と、「鳥かごを捨てる行為ありきで鳥を逃がした」ことの2点から、批判されてしかるべきだと考える。後者を補足すると、このドラマでは「その回で救われた人は最後に何かを捨てる」というのがお決まりになっているが、アタルには「捨て去るべき過去」を象徴する物品が特になかった。そこで脚本上の必要からアタルがカナリヤを飼っているという設定を付け加え、最後にそれを捨てさせたというわけだ。率直に言って、アタルがカナリヤを放して鳥かごを捨てる行為にあまり必然性はない。

 いよいよ次回の第9話で最終回を迎えるが、最大のヤマ場である母親との対決を終えてしまっただけに、これ以上話を続けるのは蛇足ではないのかという声もちらほら聞こえる。第7話までの安定したおもしろさを覆すのは容易ではなさそうだが、「さすがは遊川和彦脚本だ」と言いたくなるような最終回を期待したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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