杉咲花が主演を務める連続テレビドラマ『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)の第7話が2月28日に放送され、平均視聴率は前回から1.4ポイント増の10.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。放送中に北海道で地震が発生してドラマが中断した第6話を除けば、ここまですべての回で10%を上回っている。
このドラマは、あらゆるものが見える能力を持つ派遣社員・的場中(まとば あたる/杉咲花)が、その能力を駆使して周りの正社員たちが抱える悩みを解決していくお仕事コメディードラマだ。タイトルには「占い師」とあるが、アタルの「占い」はその人の過去を見る超能力(霊能力?)に基づいてアドバイスを送るといったもので、カウンセリング的な要素が強い。
アタルは、自身が働くイベント会社の「Dチーム」に所属する6人の社員を1話で1人ずつ占ってきたため、第6話を終えた時点でチーム内にはもう占う相手がいなくなっていた。ここでいよいよ、いつも無茶な案件をDチームに持ち込んでくる代々木部長(及川光博)の出番となった。
代々木はいつも調子のいいことを言って下にはめんどくさい案件を押し付け、社長や幹部にはごますりばかりしているような男。クライアントからいくら無理なことを言われても突き返さず、ただ右から左へと部下に流すだけの無能な上司だ。Dチームは代々木のせいでこれまでさんざん苦労を強いられ、そのたびにアタルのおかげでなんとか切り抜けてきた。
ところが、第6話で代々木のとんでもない正体が明るみに。イヤミで無能なだけならまだしも、自身の点数稼ぎのために社員のリストラを独断で進めていたことがわかったのだ。自分の利益のために人の人生を狂わせてしまうような人物が許されるはずもない。視聴者の関心は、「代々木部長がどんな罰を受けるか」、言い換えれば「第7話でアタルがどれだけ代々木をボロクソにやっつけるか」に集まっていた。
唐突にアタルが代々木に「あなたを見ます」と言い出し、代々木もすんなりそれを受け入れるというご都合展開が繰り広げられた中盤は、正直言ってつまらなかった。代々木が罰を受けたわけでもなければ、アタルがことさらに攻撃したわけでもないからだ。これまでアタルが占ってきたDチームの面々は、それぞれ「弱さ」を抱えていた。だから、「アタルの言葉で前向きになった」という結末はすんなり納得できる。だが、代々木がやってきたことは「弱さ」では済まされない。実際に「悪」に手を染めてしまったからだ。それなのに、今までと同じくアタルに軽く説教されただけで許されていいのか、とモヤモヤしてしまった。
ところが、第7話はここからが見せ場だった。若き日の熱い気持ちを取り戻した代々木は気難しいクライアントを一喝し、「完璧な仕事をしている」と部下を擁護。これまで欠かさず行ってきた社長のアテンドもすっぱりやめ、「疲れている部下を先に行かせてください」と社長を置き去りにしてエレベーターのボタンを押した。これはかっこいい。
ここまでコロリと手のひらを返されたら、視聴者だって思わず代々木を許してしまう。「代々木にバチが当たればいいなあ」とばかり考えていた己の心の狭さが少し恥ずかしくなった。「悪い人が改心する」という展開を素直に楽しまなければ。
さて、これでアタルの周りの人々はことごとく浄化されたが、アタル本人には暗雲が立ち込めている。金もうけの道具としてアタルを利用しようとする母親・キズナ(若村麻由美)がついにアタルの居場所を突き止めたのだ。キズナは現在、インチキな占いで信奉者を集めているらしい。年齢を感じさせない若村の美貌が、キズナの不気味さを際立たせる。
予告映像によれば、次回はアタルが今まで占った社員たちが逆にアタルを占うらしい。それはそれで斬新でいいと思うのだが、それでアタル自身が救われたとしたら、その後最終回までの1話か2話は何をやるんだろうか。脚本の遊川和彦には、最終回ですべてを壊した『○○妻』(日本テレビ系)のような“実績”があるため、一部視聴者からは不安の声も上がっている。さすがに今回はバッドエンドはないと思うが……。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)