木村佳乃主演の連続ドラマ『後妻業』(フジテレビ系)の第8話が12日に放送され、平均視聴率は前回から0.5ポイント減の5.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。
このドラマは、遺産相続目当てで資産家の老人の後妻に収まり、次々と大金をせしめる武内小夜子(木村佳乃)と、小夜子の正体を暴こうとする中瀬朋美(木村多江)の対決をメインとした物語。小夜子は相棒の柏木亨(高橋克典)と組んで資産家の中瀬耕造(泉谷しげる)の遺産をまんまと手にしたが、耕造の娘・朋美は小夜子が父を殺したのではないかと疑っている。
とはいえ、小夜子が罪を犯したという証拠はまだない。劇中の登場人物にとっても、視聴者にとっても謎のままである。それをいいことに小夜子は次々と老人にねらいを定め、彼らを手玉に取ってきた。ところが、第8話ではそんな小夜子についに天罰が下った。
不動産会社の役員を装っていた舟山(中条きよし)が詐欺師の本性を現し、それを見抜いた小夜子をボコボコに痛めつけてカネを奪い、逃走したのだ。人をだまし続けた因果が巡ってきたのである。この時の中条きよしはすごかった。紳士的で優しいダンディーなおじさまが、一度下を向いて再び顔を上げたらヤクザまがいの暴力的な人物に豹変していたのだ。普段は優しそうで実は怖い人を演じる役者といえば、小日向文世を真っ先に連想する人も少なくないと思うが、「舟山は渋くてダンディーなおじさんである」という設定からいえば、中条きよしはドンピシャの起用だったといえよう(念のために言っておくと筆者は小日向文世も好きだ)。
この後小夜子から話を聞いた柏木は舟山を痛めつけてカネを取り戻すが、今度は暴力団関係者である舟山の息子からゆすられる結果に。さらに、柏木は自身の会社の経理担当にも裏切られ、ますますピンチに陥っていく。おまけに最終回の予告映像では、小夜子の死を思わせる場面まであった。果たして小夜子と柏木は、さまざまなピンチを切り抜けて生き延びることができるのか――というのが、最終回の内容になりそうだ。
最終回で回収されるべき要素はほかにもある。「小夜子は前の夫たちを殺害したのか」「本当に耕造を殺したのか」「後妻業で稼いだカネを何に使っているのか」などだ。朋美と元夫との関係や、小夜子と朋美の関係も最終回に積み残された。こう考えると、最終回で描かなければならないことはあまりにも多い。「朋美の夫の浮気」や「朋美と探偵の本多との一夜限りの過ち」など、特にその後メインストーリーに絡んでくるわけでもなく、それほど広がるわけでもないエピソードに尺を割くくらいだったら、最終回直前の今回あたりでもう少し話を進めておくべきだったのではないだろうか。
とはいえ、小夜子と柏木への包囲網がじりじりと狭まっていくような状況で最終回を迎えることから、ネット上では「ようやくおもしろくなってきた」「最後のどんでん返しに期待」「ハッピーエンドになってほしいけど、どうなんだろう」と、最終回を待ち望む声が高まっている。
第8話には、詐欺師の舟山が本名と住所をバカ正直に結婚相談所に届け出ていたこと(これによって舟山は詐欺師だとバレ、カネも奪い返された)や、殺人の道具とおぼしき練炭や注射器を柏木が会社の経費で落としていたこと(これによって柏木は経理担当者に裏切られた)など、あからさまなツッコミどころも目立った。特に後者については、「そんなもん経費になるわけないだろ」とテレビに向かって突っ込んだ人もいたはず。結婚相談所が練炭や注射器を買ったら、勘定科目はいったい何になるのだろうか。
そんなことはどうでもいいのだが、このような「そんなわけないだろ」と言いたくなるポイントが増えたのも、いい傾向だ。逆説的なようだが、ストーリーのなかに誰もが指摘したくなるツッコミどころがたくさんあるドラマは、「ネタドラマ」として一定の層に支持され、話題を集めるからだ。このドラマにはそれが足りなかった。木村佳乃と木村多江のドタバタコントばかりが話題になってきたが、最終回は思い切りおバカ路線を突っ走って有終の美を飾ってもらいたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)