『パーフェクトワールド』松村北斗くんの演技に感動の渦「ジャニーズだと思わなかった」

『パーフェクトワールド』公式サイトより

　松坂桃李が主演を務める連続テレビドラマ『パーフェクトワールド』（フジテレビ系）の第4話が14日に放送され、平均視聴率は前回より0.5ポイント増の6.5％（ビデオリサーチ調べ、関東地区）だったことがわかった。

　このドラマは、大学時代の事故で下半身が不随になった建築士の鮎川樹（松坂）と、高校時代の同級生・川奈つぐみ（山本美月）が繰り広げるラブストーリー。ともに30代手前の2人は偶然に再会し、交際がスタートした。2人が正式に交際をスタートさせたのは第2話のラストである。つまり、2人が交際に至る過程を描くドラマではなく、交際してからの山あり谷ありを描くドラマだということになる。

　ただ、前述の通り、本作の視聴率は決して高くない。理由はいくつかあると思われるが、そのひとつに「早い段階で2人がくっついてしまったこと」があるのは否めない。ちなみに筆者は、第1話を視聴した時点で「ここがピークかな」と感じた。川奈はかつての片思いの相手である鮎川に再会したものの、スポーツマンだった彼は車いすが手放せない生活を送っていた――という衝撃に勝る展開が、この後に起こるとは思えなかったからだ。

　鮎川が障害を抱えていることに対して特になんの偏見も持たず、彼への思いを深めていく川奈の姿も新鮮だった。鮎川の姿を通して「下半身不随の人ができることとできないこと」「車いすを使用する人が直面する問題」などをリアルに描き出し、障害者の社会生活について視聴者に考えさせる機会を与えた点でも非常に良かったと思う。それだけに、筆者は内心「第2話以降は蛇足になるのではないか」と心配してしまった。第4話を終えた時点でも、この心配はぬぐい切れていない。

　なぜかといえば、これまでも、そしてこの先も、要は「川奈と鮎川がさまざまな困難を乗り越えていく」というストーリーにしかなり得ないからだ。視聴者の間でも、早くも「なんか飽きてきた」「恋愛ドラマだからしかたないけど、同じことの繰り返しなんだよね」といった声が出始めている。

　このドラマには、「川奈がそんなに鮎川を好きになる理由がよくわからない」との批判もずっと付いて回っている。それもそのはず、そこはまったくと言ってよいほど劇中で描かれていないからだ。今さら言っても仕方がないことだが、川奈と鮎川が互いに引かれ合い、交際をスタートさせるまでの過程をもう少し何話かかけて描いていれば良かったのではないか。1クールの中盤で2人の関係が変化するのであればペース配分としてもいいし、2人の関係性にも説得力が生まれる。障害を単なる視聴率稼ぎの道具にせず、まっすぐに描いている点では本当に素晴らしいドラマだと思うだけに、恋愛ドラマとしての描き込みが足りないことは残念でならない。

　とはいえ本作には、そうした欠点を補うだけの力は十分にある。今回は終盤で、普段は義足であることを隠して明るく振る舞っている渡辺晴人（松村北斗／SixTONES、ジャニーズJr.）から「障害乗り越えるとか受け入れるとか無理なんだって。みんな平気じゃないけど平気なふりして生きてるだけなんだって」との悲痛な叫びが飛び出し、視聴者の心を締め付けた。

　同僚である鮎川も「障害を負ったからこそ学べたことは山ほどあります。でも、だからって障害者で良かったなんて思ったことは一度もない」と応じた。健常者の立場としては、ただただ「そうなんだ……」と受け止めるしかない。でも、普段は考えることも耳にすることも少ない障害者の本音を、（ドラマとはいえ）聞けるのは貴重な機会である。ズンと胸に来るし、それを聞いたからといって自分にすぐ何かができるわけでもないかもしれないが、知っておくことに意味があると思わせてくれる。

　劇中の人物に目を転じれば、前述した渡辺を演じる松村は「細かい表情の変化が本当にすごい」「ジャニーズだと思わなかった」「自然な演技がすごい」などと絶賛を集めているし、かわいい顔をして「障害者とは付き合えない」とバッサリ切り捨てるつぐみの妹・しおり（岡崎紗絵）の憎めないクズっぷりも話題を集めている。鮎川のヘルパーとして川奈の前に立ちはだかる長沢葵（中村ゆり）のストーカーっぽさも注目を浴びており、「あのヘルパーほんと無理」「長沢さん、なんなの。立場わきまえてほしい」「あのヘルパーさんがうっとおしくて、見るのがいやになってきた」などと視聴者からヘイトを集めている。長沢はそういう役回りなので、狙いとしては成功しているといえよう。

　次回は、鮎川と川奈の交際に大きな転機が訪れるようだ。困難が大きいほど恋は燃え上がるものだが、2人の場合はどうなるのか。引き続き注目したい。
（文＝吉川織部／ドラマウォッチャー）