窪田正孝が主演を務める月9ドラマ『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ系)の第8話が27日に放送され、視聴率は自己最高の13.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったことがわかった。
このドラマは、レントゲンやCTで病変を写し出す放射線技師・五十嵐唯織(窪田)が「病の写真家」として、目には見えない患者の病気を見つけ出し、命を救っていく医療ドラマだ。視聴率も大型連休序盤の4月29日に放送された第4話(9.1%)を除けば2桁をキープしており、今期連ドラの直近の放送回のなかでは、16日放送の『緊急取調室』(テレビ朝日系)の12.3%を抜いて視聴率1位となった。
だが、自己最高視聴率を更新した第8話の内容が良かったかといえば、決してそうではない。「検査難民」という社会問題を提起しておきながら、特定の患者に便宜を図るという裏技で“解決”した第7話も相当微妙だったが、第8話はさらに輪をかけて低レベルなストーリーが繰り広げられた。
この回には、入院している子どもたちが季節外れであるにもかかわらず「ハロウィーンがやりたい」と言い始め、病院側もそれに応えて準備を進めていた――という不自然極まりない舞台設定がなされていた。そんな謎の設定を踏まえて、放射線科医の甘春杏(本田翼)は検査画像を見ながら「疑陽性なら投薬、陽性なら手術。つまり、トリック オア トリート」とつぶやいたのだが、まったくもって意味不明。ネット上でも一斉に視聴者から「どういうこと?」「全然うまいこと言えてないぞ」「は? ってなった」といったツッコミの声が上がった。
終盤にも、夫に本心を打ち明けられなかった女性患者に対して放射線技師の黒羽たまき(山口紗弥加)が「ハロウィーンだかなんだか知りませんけど、そんな(本心を覆い隠すような)仮面もう取っちゃいましょうよ」と声を掛ける場面があったが、これも無理やり感満載。ハロウィーンと聞いて「仮装」ないしは「コスプレ」を思い浮かべる人はいても、「仮面」というキーワードは普通出てこないと思う。
内容がまったくハロウィーンにかかっていないのに、なぜそんなシチュエーションを設定する必要があったのか、はなはだ疑問である。一応、劇中での理由は明かされた。「入院している子どもたちにお菓子を食べさせてあげたい」と考えた一人の少女(久美/稲垣来泉)が、その口実としてハロウィーンの開催を病院側に希望したというものだった。子どものくせに策士だなあとは思うが、これ自体はあり得ないとも言えない。
だが、この久美ちゃんはストーリーを引っかき回すだけ引っかき回したものの、結果的にほとんど意味のない存在のまま終わった。「検査を受けない」と言い張って医師らを困らせたり、検査当日に病室から抜け出して行方不明になったりしたものの、検査を受けたくない理由が明かされることもなかった。
さらに、そんな久美ちゃんと甘春が偶然にも院内のエレベーターに閉じ込められてしまったり、閉じ込められてすぐに都合よく(悪く?)久美ちゃんがエレベーター内でけいれんを起こしたりと、ベタベタな展開のオンパレード。視聴者からも、今どきにしては珍しいほどの“ドラマあるある”が取り広げられたことに対して「ドラマかよ」「ドラマみたいな展開キター」と皮肉る声が聞かれた。結局この回が終わるまでの間に久美ちゃんが再検査を受けることはなく、最後まで病気を特定することも治療することもできないまま終わった。
そのうえこの回には、主要な登場人物に病気が見つかるという「医療ドラマあるある」まで登場。体調不良を押して働いていた甘春がついに倒れ、階段から転落する様子が描かれた。はっきり言って全体的に古いし、あれこれも描こうとして取っ散らかった印象になっていたのは否めない。
とはいえ、あえて擁護するとすれば、比較的出来の悪い7話と8話を1クールの終盤にもってきたフジテレビの判断はおそらく正しい。もしクールの序盤に放送していたら、「つまらない」「意味がわからない」などと批判を浴び、視聴率はもっと低迷したはずだからだ。
さて、いよいよ残り回数も少なくなってきたが、「医師免許を持っていることを隠している五十嵐の正体は周囲にバレるのか」「甘春が五十嵐との昔の記憶を覚えていないのはなぜか」「甘春が五十嵐のことを思い出す日は来るのか」「甘春の父が院長を辞した理由」「甘春の父が医師として復帰することはあるのか」など、描かれるべき要素はまだまだ多い。すべてが回収されるのかどうか、最後まで見届けたい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)