『集団左遷!!』失速は福山雅治のせいじゃない!業界関係者が語る連ドラ視聴率のカラクリ
“チャレンジャー”福山雅治
そもそも福山さんなんて、あれだけ音楽的に成功していて、映画でも評価が高く、是枝裕和監督の『そして父になる』なんかでカンヌ国際映画祭にも行っていて、普通に考えれば、そんなに連ドラなんてやらなくてもいいと思うんですよ。たま〜に、自分が本当にいいと思える映画とかNHKのドラマにだけ出て、時々CM仕事で高額ギャラをいただいてあとは極力マスコミへの露出は控える……ある程度売れてしまえば、そんなタイプの役者さんなんて大勢いますよね。なのに、あえて連ドラに出る。そして、視聴率が悪いと叩かれる(笑)。
たぶん、もうそれは彼の性というか業というか、やっぱり新しいチャレンジを常にしていたい人なんでしょうね。今回のドラマでも、“どこにでもいるような普通のサラリーマン”という、最近の福山さんにしてはわりと珍しいタイプの役柄に挑戦していますしね。
対して、自分のイメージを壊さない、同じようなタイプの役柄を演じることが多い“スター”タイプの俳優さんも多くて、高倉健さんなんかがその代表格。「不器用で寡黙だけど誠実な男」というイメージが高倉健さんの代名詞にもなっていて、ついこの5月に逝去された降旗康男監督と共に、『鉄道員(ぽっぽや)』『駅 STATION』など数々の名作を残されています。最近だと木村拓哉さんがそうで、いろんな役柄を演じてはいるけれど、基本的には、“一見そうは見えないけど、キレ者”という、ワンパターンの“味付け濃いめ”キャラですよね。
もちろん、今回、福山さんに“どこにでもいる普通の男”を演じさせるというチャレンジが、どこまでご本人によるものなのか、あるいはドラマ制作側の判断によるものなのかは知りませんが、でも、いずれにせよそのチャレンジを、福山さんが受け入れたわけですからねえ。最終回に向けて視聴率は上昇してきましたが、どうなることやら……。
「連ドラの主役」を引き受けることの“責任”
このようにドラマの視聴率は、役者の人気や演技力、脚本や演出などの制作陣の力だけでなく、GWや祝日にも大きく影響されています。
ほかにも、天候だったり、あるいは他局の裏番組に大きな特番が入ったり、そのドラマの直前の時間帯に放送されている番組が人気があるかどうかなど、さまざまな要因で左右されてしまいます。それは、役者はもちろん、マネジメントする我々からしても、予測できることとできないことがあり、結局役者さんからしてみれば、「受けた仕事を精一杯やる」しかないんですよね。
先ほど、視聴率が下がったからといって、主役がすべての戦犯みたいに叩かれるのは気の毒だというお話をしましたが、でも、逆にいってみれば、それを背負うのが“連ドラの主役”ということでもあるんですよ。だって、そのドラマが大ヒットすれば、「あの大ヒットドラマの主演」として祭り上げられるのも、また主演俳優なわけですからね。
すべてを覚悟したうえで、役者はドラマに取り組んでるのだと思います。そのような役者の思いも少し心に留めつつ、ドラマを見ていただくと、また違う面白さが見えてくるかもしれませんよ。
(構成=白井月子)