多くのネットユーザーに親しまれてきた「ゆっくり茶番劇」が第三者であるYouTuberの柚葉氏に文字商標として登録された問題で、ニコニコ動画を運営するドワンゴが23日に会見。柚葉氏に商標権を放棄するよう交渉し、応じなかった場合は無効審判請求をすると発表した。
「ゆっくり茶番劇」は、人気シューティングゲームを中心にした同人作品群『東方Project』の二次創作動画。デフォルメされた人気キャラの霧雨魔理沙と博麗霊夢がテキスト読み上げソフトの音声で寸劇を繰り広げるもので、その派生形の「ゆっくり実況」「ゆっくり解説」なども含め、ニコニコ動画やYouTubeで人気ジャンルとなっている。
ガイドラインを守れば「誰でも無料で使える」とされていたが、今月15日に原作と特にかかわりのない「ゆっくり系動画の投稿者」だった柚葉氏が「ゆっくり茶番劇の商標権を取得しました」「商標を使って利益を得る場合のライセンス料は年間で10万円」などと発表したことで大問題となった。
ドワンゴの会見やプレスリリースによると、同社は商標権者(柚葉氏)に対して商標権の放棄を交渉し、応じてもらえなかった場合は「無効審判を請求する」という。
また、同社は第三者による独占を防止するため、「ゆっくり」系動画に関する複数の文字列の商標登録を出願すると発表した。
もし特許庁がジャンル・カテゴリーを示す表示として一般的に使用されていることを理由に登録を拒絶した場合は「誰も登録できない」ことが明らかになるとし、登録できた場合でも「弊社は将来にわたり一切の権利行使をしないことをお約束します」としている。
これらの取り組みは「ネットクリエイターを守るためのもので、東方Project原作者であるZUNさんにもご承知いただいている」とのことで、同社が代表して今回の商標問題の解決に動く形になったようだ。
柚葉氏が商標権放棄の手続きを開始か
一方、柚葉氏が所属するライバーコミュニティ「Coyu.Live」は21日付のTwitterで「今朝柚葉より『月曜日から放棄手続きを開始する』との報告がありましたこと、ご報告をさせて頂きます」と発表した。
予告された手続き開始日である23日には「本日10時頃柚葉より、弁理士宛に抹消申請書類を送付、弁理士へ特許庁への提出を要請したとの報告を受けました。画像により、弁理士事務所宛の受領書を確認致しました」などと明かしている。
このまま手続きが順調にいけば商標権は放棄され、ドワンゴが無効審判を請求することなく事態は収束となりそうだ。
過去にもネット発の「誰のものでもない」はずのものの商標登録をめぐり、混乱が生じることが少なからずあった。今回の騒動が収束したとしても同じようなトラブルが今後も起きる可能性はあるため、商標問題は出願時の弁理士や審査官の判断なども含めて、ネットカルチャーの大きな課題として残りそうだ。