ローカル局が熱い?活発化するテレビの挑戦 視聴率競争とは一線、地域と併走する意欲的試み
●日本民間放送連盟賞 特別表彰部門「放送と公共性」とは
放送界には、放送批評懇談会が選ぶ「ギャラクシー賞」、全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)が選ぶ「ATP賞」など、いくつかの大きな賞がある。「日本民間放送連盟賞」もその一つで、全国の民放各局で構成される日本民間放送連盟(民放連)が主催しているものだ。
番組部門、CM部門、技術部門などに分かれており、今年筆者は特別表彰部門「放送と公共性」の審査員長を務めさせていただいた。一緒に審査に当たったのは石澤靖治(学習院女子大学長)、入江たのし(メディアプロデューサー)、木原くみこ(三角山放送局会長)、村上雅通(長崎県立大学教授)の各氏だ。
この部門の特色は、応募事績の幅広さと奥行きにある。「番組」という枠にとどまらない複合的な取り組み、新たな視聴者・聴取者サービスへの挑戦、さらに「放送のあり方」そのものを探る試みなどを含んでいるからだ。
各地のローカル局が、民放らしい日常的な視聴率競争とは一線を画しながら取り組んでいる果敢な「放送活動」。今年の全入賞作(最優秀賞1本、優秀賞4本)を通して、放送の現在を見てみたい。
<最優秀賞>
●ドキュメンタリー映画とテレビの未来(東海テレビ)
戸塚ヨットスクールの現在を追った『平成ジレンマ』(2011年)に始まり、最新作『神宮希林 わたしの神様』(14年)まで、東海テレビが製作したドキュメンタリー映画は計7本に上る。死刑事件の弁護を請け負う弁護士をテーマにした『死刑弁護人』や『約束 名張毒ぶどう事件 死刑囚の生涯』など話題作も多い。
注目すべきは、この取り組み自体が現在のテレビに対する鋭い問いかけになっていることだ。NHK以外では、たくさんの人の目に触れる時間帯で放送されないドキュメンタリー。テレビにおけるこのジャンルの位置。賛否両論があるテーマの扱いが制限される最近の傾向。ローカル局からの発信が全国に届かない現状。それらが閉塞感を生み出し、作り手の意欲を削いでいるのではないか。
東海テレビはそこに風穴を開けた。テレビであることの制約を超えた内容を盛り込み、全国の劇場や自主上映の会場で直接、視聴者(市民)に見てもらう。また、その反応を確かめるだけでなく、時にはつくる側と見る側との交流や議論も行う。