私たちが病院に行って身体の不調を訴えれば、医師から処方箋をもらって、調剤薬局で薬を買うことができます。また、街中にはドラッグストアや薬局が数多くあり、さまざまな薬を簡単に手に入れることができます。いずれも、身体の不調を改善したい、症状を止めたいと薬の作用を期待して購入します。
しかし、薬には必ずプラス(効果)とマイナス(副作用=毒性)があって、マイナスのほうが大きく出てしまうケースが多くあります。重篤な副作用が出た場合は死に至ります。
欧米では副作用死に関する調査研究も行われており、米国では年間推計10万6000人が副作用で死亡(全米医師会報、トロント大学のチームの研究報告)と具体的な数まで出ています。
世界一、薬を飲むのが好きな国なのに、残念ながら日本ではこのような「副作用死」に関する調査研究はなされていませんが、日本での副作用死はアメリカよりずっと多いと考えられます。その最大の理由は欧米では「1剤処方」が基本、多くても2剤であるのに対し、日本では5剤以上の処方が当たり前になっているからです。筆者が確認しているケースでは、あちこちの医療機関で受診し、84剤を処方されていた人もいました。
特に、窓口の自己負担率が1割である75歳以上の高齢者には10剤以上を処方することもよくあります。体力が低下し、本来選択的に薬を処方しないといけない年代の方たちが目を覆いたくなるような“薬漬け”にされているのです。その結果、多くのおじいちゃん、おばあちゃんが命を落としていることは、容易に察しがつきます。
4剤以上の併用は危険
アメリカの医師が若いドクター向けに書いた名著『ドクターズルール425 医師の心得集』(クリフトン・K・ミーダー編、福井次矢訳/南江堂)には、医師が持つべき「薬に関する心得」として次のような提言が出てきます。
(1)4剤以上飲まされている患者は、医学の知識が及ばない危険な状態にある。
(2)薬の数が増えれば増えるほど、副作用のリスクは加速度的に増す。
(3)処方を中止しても、患者の状態が悪くなるような薬はほとんどない。
(4)可能ならば、薬の処方を全部やめる。それができないなら、できるだけ薬を出さないようにする。
(5)効いているのか疑問に思った薬は、たぶん効かない薬だ。
(6)「患者は処方通りに薬を飲まない」
この中で特に興味深いのは(1)で、最初に「4剤以上飲まされている患者は、医学の知識が及ばない危険な状態にある」と断定していることです。