忙しさや悩みが続き、抜け毛が多くなる経験をしたことのある人は、多いでしょう。仕事が夜遅くまで続き、睡眠時間を削るような生き方をしている人は、若くても髪の毛が薄くなり歯も弱って抜けそうになります。このような反応は、病気をつくる基本現象になっています。
髪の毛は皮膚が特殊化した組織です。歯は骨がさらに特殊化した組織になっています。多細胞生物は、部分部分で細胞を特殊化して、全体として調和するような構成をとっています。しかし、ストレスが強くのしかかると、特殊化を維持するエネルギーが低下するので、この特殊化した組織を保持できなくなってしまいます。見方を変えると、特殊化した組織を切り捨てて最少のエネルギー消費で命をつなぐ反応といえるでしょう。
特殊化した組織を切り捨てる反応は、基本的にはマクロファージが行い、そこにマクロファージから進化した白血球群も加わってきます。髪の毛を切り捨てるのは、皮膚の下に存在するマクロファージであるランゲルハンス細胞です。歯や歯槽骨を切り捨てるのは、骨に存在するマクロファージである破骨細胞です。そもそもマクロファージは、多細胞生物になる前の単細胞生物時代の名残の細胞で、アメーバ様のオールマイティの能力を持った細胞です。
徹夜をする、真夜中までパソコンを使う、一日中休みなく働くなどの急激なストレスが加わると、私たちの肝臓、腎臓、膵臓が悲鳴を上げて破壊されます。これらが急性に破壊された病気が、それぞれ、劇症肝炎、急性糸球体腎炎、急性膵炎です。
熱心に止めると慢性化
では、これらのメカニズムを考察してみましょう。
肝臓は腸上皮から胆汁をつくる外分泌腺として進化してきました。もともと肝類洞は体腔に開いていましたが、その後、門脈の進化とともに血管系につながっています。特殊化の度合いが強いのです。腎臓はえらの血管系から排泄器官として進化しています。一時、造血も行っていました。腎糸球体は毛細血管の特殊化の極限にあるでしょう。膵臓は腸の分泌腺から分かれ、特殊化した臓器です。
いずれにせよ、この3つの臓器は内臓の中でも特殊化の頂点にあるので、ストレス感受性が高いわけです。強いストレスがかかると、特殊化を切り捨てる反応が起こります。マクロファージから進化した顆粒球が切り捨て反応の前線に立ちます。末梢血でも激しい顆粒球増多が見られます。これに、CD8陽性T細胞やマクロファージも加わります。