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動物実験は虐待か…実験動物の苦痛を軽減するシステムが不十分な日本

末田輝子
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実験動物が苦痛にもだえ苦しんでいる。日本には苦痛を軽減するシステムが確立されていないの画像1当たり前だが、実験動物は苦痛を感じている!(depositphotos.com)

 現在、我が国の動物実験における支援体制は、残念ながら十分とはいえません。一般的に、医科系大学の研究者は診療業務のかたわらで動物実験を行っているので、多忙のために研究者自らが十分な術後ケアをできる状況にはありません。

 また、獣医学的ケアの必要性の認識や、実験動物専門獣医師、実験動物看護師の数も十分ではありません。それゆえ、実験動物たちが被る「苦痛」が十分に軽減されているとはいえないのが現状です。

 動物実験が一般の人たちから往々にして非難される所以は、実験動物たちに苦痛を与えているということに起因します。物言えぬかわいい動物たちを、意図的に苦しめているという理由です。実験動物たちが被る苦痛の軽減を担保するシステムが確立されなければ、社会が動物実験を受け入れるのは難しいでしょう。

水準の低いわが国の実験動物の苦痛軽減対策

 欧米では、動物は「痛みを感ずる能力のあるモノ」と定義をされており、苦痛軽減の重要性はとても大きく認識されています。ですから、その倫理的課題を解決するために多くのガイドラインが作成されています。たとえば、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals 8th ed.( 2010)やEUROGUIDE: On the accommodation and care of animals used for experimental purposesが代表的です。

 欧米で公表された各種ガイドラインは我が国でも参考にされていますが、残念ながら我が国の実験動物の苦痛軽減対策水準は、いまだ欧米に遠く及ばないのが現状です。その理由は大きく2つあると考えています。

 ひとつは、実験動物に対する縦割り行政に加え、行政の傘下にない分野での動物実験も多々ある、すなわち行政の網羅性に問題があることです。日本では、動物実験を「動物実験」と「実験動物」に分けて扱っています。環境省が扱うのは「実験動物」、そのほかの省庁(文科省、厚労省、農水省)が扱っているのは「動物実験」です。

 このように、「実験動物」や「動物実験」に対する共通の認識のなさが動物福祉への取り組みにブレーキをかけていると考えられます。それでも、これら三省は傘下の研究機関を把握しようと努力していますが、しかし、傘下にない研究機関の数やそこで行われている動物実験の実態は、どの行政機関も把握しようとすらしていないように思われます。

 もうひとつの原因は、日本の法規や種々のガイドラインには「獣医学的ケア」という文言がどこにも入っていないため、動物実験での「苦痛の軽減」で果たすべき獣医師や動物看護師の役割があいまいであることです。

 2005年の改正動愛法で、初めて「3Rの原則」が明記されたことは記憶に新しいところです。特に、その中の「苦痛の軽減」には「獣医学的ケア」が欠かせず、そのための専門性を持つ獣医師や飼育技術者の配置が必須であるものの、そのことが我が国のルールのどこにも書かれていないのです。

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