コーヒー、1日3~4杯で10~20%寿命延長との研究結果…人種別な差の研究も
コーヒーは少し前まで健康に良い飲み物ではなかった
最近、健康番組などでは、コーヒーが健康に良いという情報が多く発信されています。ただ、これは比較的最近の傾向で、少し前まではむしろ健康を害する可能性がある、という論調のほうが多かったのです。なぜ、以前にはコーヒーは健康に悪いとされていて、それが今では逆転したのでしょうか? その歴史をちょっと紐解いてみましょう。
コーヒーが健康に悪いと考えられた理由
コーヒーはカフェインを多く含む飲み物です。カフェインには覚醒作用と常用性があります。また、カフェインは交感神経を刺激して気分を高めます。こうしたカフェインの性質から、徹夜などの不規則な生活で、コーヒーは「目を覚ましテンションを上げる飲み物」として使用されるという、ちょっと不健康なイメージがついてしまいました。毎日コーヒーを飲まないと落ち着かないというコーヒー常用者の言動は、コーヒーが麻薬に近いような悪いイメージを、これも広めてしまったように思います。
一時期のコーヒーのCMでは、優雅なカフェでのんびりとコーヒーを飲むような姿が、よく使われていましたが、これは不健康な生活とリンクしたコーヒーのイメージを、なるべく払拭する狙いがあったのです。その悪いイメージが覆るきっかけとなったのは、2012年に発表された一編の論文でした。
2012年NEJM論文のインパクト
2012年のthe New England Journal of Medicine誌に、40万人以上の健康調査において、コーヒーの摂取量と生命予後との関連を分析した論文が掲載されました(参考文献1)。それによると、コーヒーを飲まない場合と比較して、1日6杯以上飲む人は男性で10%、女性では15%、それぞれ有意に総死亡のリスクが低下していました。死亡原因別に見ると、がんによる死亡のみは差がありませんでしたが、それ以外の心臓病、呼吸器疾患、脳卒中、感染症、糖尿病、事故などによる死亡リスクは、いずれもコーヒーを飲む人では低下が認められました。分析にはやや粗い部分もありましたが、世界的にもっとも権威のある医学誌で、40万人以上という大規模調査により、コーヒーが寿命を延ばす、という結果が得られた意義は、極めて大きなものだったのです。しかし、これはまだ序の口でした。
次々と発表されるコーヒーの健康効果
2015年のAmerican Journal of Clinical Nutrition誌に発表された論文では、日本の代表的な疫学データである、多目的コホート研究を利用したコーヒーの効果が検証されています(参考文献2)。
9万人以上の住民に健康調査を行い、平均で18.7年という長期間の経過観察を行ったところ、コーヒーを飲まない人と比較して、1日平均で1杯は飲まない人は9%、1から2杯飲む人は15%、3から4杯飲む人は24%、5杯以上飲む人は15%、それぞれ有意に総死亡のリスクが低下していました。この死亡リスクの低下は、心臓病、心血管疾患、呼吸器疾患による死亡が主に影響をしていて、がんの死亡リスクの低下は明確ではありませんでした。