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石原藤樹「その医療の常識、本当ですか?」

コーヒー、1日3~4杯で10~20%寿命延長との研究結果…人種別な差の研究も

文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長

コーヒーの生命予後改善効果に人種差はあるのか?

 コーヒーは世界中で飲まれている飲み物です。前出の2012年New England誌の論文は多くが白人種を対象としたものでした。日本の論文でも同様の効果が確認されていることから、人種差を超えた効果がありそうですが、これだけではなんともいえません。

 そこで2017年のAnnals of Internal Medicine誌に、アメリカの国立がん研究所の主導によって、ハワイとロサンジェルスとカリフォルニアで、白人種以外にハワイの先住民や日系アメリカ人、ラテンアメリカ人など多人種において、コーヒーの摂取量と死亡リスクとの関連を検証した研究結果が報告されました(参考文献3)。

 これによると、トータルではやはりコーヒーを多く飲む人ほど、最大で18%程度の死亡リスクの低下が認められ、ハワイの先住民ではその傾向は確認できませんでしたが、それ以外の人種においては、白人種と違いのない結果が得られました。カフェインレスのコーヒーでも、同様の効果が得られていました。ハワイの先住民のデータをどう考えるのかは微妙ですが、ほぼ人種差なく、コーヒーの健康効果は見られることが確認されたのです。

2017年のアンブレラ・レビュー

 その後も多くの研究結果があり、それをすべてまとめたものが、2017年のBritish Medical Journal誌に掲載された論文です(参考文献4)。これはアンブレラ・レビューという手法により、これまでの多くの研究をまとめて解析したメタ解析を、さらに複数まとめて解析したものです。要するにその時点までのコーヒーの健康効果の総まとめ的なものなのです。
 
 それによると、これまでの世界中のすべてのデータをまとめて解析した結果として、コーヒーを飲む習慣のある人の死亡のリスクが19%(95%CI;0.72から0.90)、心血管疾患の発症リスクが15%(95%CI;0.80から0.90)それぞれ有意に低下していました。がんの発症リスクについては、コーヒーを多く飲む人は18%(95%CI;0.74から0.89)これも有意に低下していました。

 ただ、妊娠中のコーヒー摂取については、流早産などのリスクや低体重のリスクが、コーヒーを多く飲む人では増加していて、女性の骨折リスクについても有意ではないものの、コーヒーを多く飲むと増加する傾向を示しました。

コーヒーの健康効果のまとめ

 これまでの多くの信頼のおける知見によって、コーヒーを1日3~4杯飲むことにより、総死亡のリスクが10~20%程度低下することはほぼ間違いがありません。この効果は人種差によらず認められていて、主に心血管疾患や呼吸器疾患などによる死亡の減少によるものです。概ねコーヒーは健康に良いと考えられますが、妊娠中の女性は1日1から2杯程度にしておいたほうが安全と考えられます。より多く飲むことで効果があるとするデータもありますが、1日5杯以上の安全性は未確認、と考えておくのが現状は良いと思います。
(文=石原藤樹/北品川藤クリニック院長)

(参考文献)
(1)Freedman ND, Park Y, Abnet CC, et al. Association of coffee drinking with total and cause-specific mortality. N Engl J Med. 2012 May 17;366(20): 1891-1904.
(2)Saito E, Inoue M, Sawada N, et al. Association of coffee intake with total and cause-specific mortality in a Japanese population: the Japan Public Health Center-based Prospective Study. Am J Clin Nutr. 2015 May;101(5): 1029-37.
(3) Park SY, Freedman ND, Haiman CA, et al. Association of coffee consumption with total and cause-specific mortality among nonwhite populations. Ann Intern Med. 2017 Aug 15;167(4): 228-235.
(4)Poole R, Kennedy OJ, Roderick P, et al. Coffee consumption and health: umbrella review of meta-analysis of multiple health outcomes. BMJ. 2017 Nov 22; 359:j5024.

石原藤樹/北品川藤クリニック院長

石原藤樹/北品川藤クリニック院長

北品川藤クリニック院長。医学博士。1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科大学院卒業。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任
北品川藤クリニック

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